お知らせイコール・パートナーシップの推進に関するガイドライン

イコール・パートナーシップの推進に関するガイドライン

平成16年4月1日制定

1.ガイドラインについて (1)ガイドライン制定の趣旨
(2)法人の責任と構成員の義務
(3)ガイドラインの対象
2.ハラスメントについて (1)パワー・ハラスメントとは何か
  1)パワー・ハラスメントとは
  2)パワー・ハラスメントを起こさないために
(2)セクシュアル・ハラスメントとは何か
  1)セクシュアル・ハラスメントとは
  2)セクシュアル・ハラスメントを起こさないために
(3)性暴力等とは何か
  1)性暴力等とは
  2)性暴力等を起こさないために
(4)マタニティ・ハラスメントとは何か
  1)マタニティ・ハラスメントとは
  2)マタニティ・ハラスメントを起こさないために
(5)アカデミック・ハラスメントとは何か
  1)アカデミック・ハラスメントとは
  2)アカデミック・ハラスメントを起こさないために
(6)もし,ハラスメントにあったら~勇気を出して対応しましょう!
3.問題解決のために (1)すぐに相談しましょう~相談員が親身に相談に乗ってくれます
(2)苦情申立て
(3)緊急措置
(4)通知~注意・警告~
(5)調停~話し合いによる解決~
(6)制裁~処分などの措置~
(7)学長・部局長のとるべき措置
(8)ハラスメントに対してとられる措置
  ~予防・救済・制裁・研修・環境改善等~
4.その他の注意事項
5.見直し・改訂

1.ガイドラインについて

(1)ガイドライン制定の趣旨
国立大学法人大分大学(以下「法人」という。)及び法人が設置する大分大学(教育学部附属幼稚園,附属小学校,附属中学校及び附属特別支援学校を含む。以下「大学等」という。)(以下「法人及び大学等」を「法人等」という。)は,憲法及び男女共同参画社会基本法並びに雇用機会均等法の精神に則り,基本的人権の尊重と男女共同参画社会づくりをめざし,法人等において,学び・研究し・働く者全てが,個人として尊重され,パワー・ハラスメント,セクシュアル・ハラスメント,性暴力等,マタニティ・ハラスメント,アカデミック・ハラスメント等(以下「ハラスメント」という。)による人権侵害のない快適な環境において,学び・研究し・働く権利を保障するために,このガイドラインを定めます。
なお,具体的な手続については「国立大学法人大分大学イコール・パートナーシップの推進及びハラスメントの防止・対策に関する規程」を別に定めます。

(注)「パワー・ハラスメント」は,和製英語で,英語ではモビングmobbingやブリングbullying,あるいはフランス語の直訳でモラルハラスメントmoral harassmentなどといわれています。本ガイドラインでは,わが国で既に「パワハラ」という用法が一般化していることから,「パワー・ハラスメント」を用いることにしました。

(2)法人の責任と構成員の義務
法人は,男女共同参画の推進に努め,ハラスメントによる人権侵害に対して厳しい態度で臨み,性差別等を生むおそれのある環境を改善して,快適な学習・研究・職場環境を作る努力をします。そのために,学長は,「ハラスメント防止委員会」(以下「委員会」という。)を設置し,ハラスメントの防止・対策に関する全学的な施策全般について責任を負い,各部局の長は,具体的な施策や措置の実施について責任を負います。
法人等の全ての構成員は,法人等において,学び・研究し・働く自由と権利をハラスメントによって妨げられることがあってはなりません。また,法人等の全ての構成員の誰もが,男女の対等な関係を前提とし,相手の立場を尊重することに努めるとともに,人間関係を損ない,人としての尊厳を傷つけることになるハラスメントを起こさないこと,また,防止することに努める義務を負います。

(3)ガイドラインの対象
このガイドラインは,法人等の構成員である,役員,教職員(常勤・非常勤を問いません。),派遣職員,学生(学部生,大学院生,研究生,科目等履修生,特別聴講学生,公開講座の受講生など大学等で教育を受ける関係にある全ての者を指します。以下「学生」という。),幼児,児童及び生徒の全てを対象とします。ただし,役員,教職員及び派遣職員については離職後,学生,幼児,児童及び生徒については,大学等を卒業,退学などで学籍を失った後においても,在職中又は在学中に受けたハラスメントについて,このガイドラインが適用されます。
このガイドラインは,ハラスメントが法人等の構成員相互間において問題となる場合には,学内・外,授業中・外,課外活動中・外,勤務時間内・外など,それが起こった場所・時間帯を問わず,適用されます。
ハラスメントが,法人等の構成員と法人等の構成員以外の者との間において問題となる場合には,当事者間に職務上の利害関係がある場合に限り,このガイドラインを適用します。したがって,教員が大学等の外において行う講演・講義又は学生の教育実習やアルバイト先での問題等についても,このガイドラインを適用します。ただし,加害者が法人等の構成員以外の者であるときには,このガイドラインの手続を準用し,法人として解決のために必要かつ適当な措置をとる努力をします。

2.ハラスメントについて

(1)パワー・ハラスメントとは何か
1)パワー・ハラスメントとは,
「権力や地位を利用した嫌がらせ」のことをいいますが,もう少し広く定義すると「自分より弱い立場の者に対して心理的・肉体的攻撃を繰り返し,相手に深刻な苦しみを与える」行為,いわゆる「いじめ」も含めることができます。
それが,性的な嫌がらせであれば,セクシュアル・ハラスメントになり,研究・教育の場において行われればアカデミック・ハラスメントになります。
例えば,「地位や権力を利用した嫌がらせ」としては,職場で,上司が部下に人格を否定するような発言をする,地位を利用して無理なことを押しつける,罵倒や冷遇,退職を強要する,などがあります。
また,「いじめ」としては,暴行や傷害などによる身体的苦痛を与える行為,無視・放置・悪口・差別・偏見等をもって関わることによって相手に不安や恐怖といった精神的苦痛を与える行為,役割や情報を与えずに社会的苦痛を与える行為などがあります。
なお,ハラスメントに当たるかどうかは,行為者の意図があるかないかにかかわらず,その行為を受けて,受け手が不快と感じたかどうかで決まります。次に,その行為者に対してハラスメントとして責任を問えるか,またどの程度の責任を問うのが妥当かについては,行為者の意図や行為の社会的相当性などを総合的に判断して決まることになります。

2)パワー・ハラスメントを起こさないために
上司として部下に対して,全面否定や人格否定になるような発言をしないようにしましょう。
また,学校や大学において,一定の者から特定の者に対して「いじめ」となる行為をしないようにしましょう。
そして,研究・教育・労働の場において,そうした言動に対して見て見ぬふりをする風潮を改め,健全な教育・研究及び職場環境を作り上げるよう努力しましょう。

(2)セクシュアル・ハラスメントとは何か
1)セクシュアル・ハラスメントとは,
行為者本人が意図するかどうかにかかわりなく,その性的言動が相手方にとって不快と受け止められ,相手方が大学等で学び・研究し・働く環境を損なうか,又は相手方に利益若しくは不利益を与えることをいいます。
例えば,職務上若しくは研究・教育上の地位を利用して,又は利益若しくは不利益を条件に,性的要求をすること(地位利用型・対価型)や,職務や研究・勉学の遂行を妨げるなどの職場又は研究・勉学環境を悪化させること(環境型)などがあります。
性に関する固定観念や差別意識に基づく嫌がらせを,ジェンダー・ハラスメントと言いますが,これも,セクシュアル・ハラスメントに当たります。
セクシュアル・ハラスメントは,男性から女性に対して起こる場合が多いのですが,女性から男性への場合や,同性間で起こる場合もあります。
セクシュアル・ハラスメントは,教員と学生,上司と部下など,いわゆる地位が上下の関係にあるものの間で生じるだけでなく,教職員などのそれぞれの同僚や学生間で生じる場合又は学生から教職員に対して,また,教職員から学生に対して生じる場合もあります。

2)セクシュアル・ハラスメントを起こさないために
男女は互いに対等なパートナーであることを認識し,常に相手の人格を尊重するとともに,相手の立場に立って考え行動することは,人間関係にとって大切で必要なルールです。相手を性的な対象とみて,力関係で支配し,心理的に圧迫することや,身体的に傷つけるようなことは,絶対にしてはなりません。
たとえ,行為者本人が意識していない場合でも,相手によっては,それがセクシュアル・ハラスメントだと受け止められることがあります。相手がそれを「望まない不快な性的言動」だと受け取れば,それがセクシュアル・ハラスメントになりますので注意しましょう。
日本人にとっては,セクシュアル・ハラスメントと感じない性的言動でも,外国人留学生などとの関係においては,社会的・文化的・宗教的な差異があり,それがセクシュアル・ハラスメントとして受け取られることがありますので注意しましょう。

(3)性暴力等とは何か
1)性暴力等とは,
同意のない性的な行為,あるいは上司部下・教員学生・先輩後輩関係などの立場による影響力,暴行や脅迫等によって,「いや」と思うこと,「いや」と言うこと,「いや」をつらぬくことが難しい状況での性的行為,その他同意なく,あるいはひそかに性的な部位を撮影する行為,更に16歳未満の子どもに対する性的な行為や教育職員による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(令和3年法律第57号)第2条第3項に定める児童生徒性暴力等に該当する行為をいいます。

2)性暴力等を起こさないために
からだとこころはその人自身のものです。たとえ交際相手でも,その接触に際して十分なコミュニケーションを図って,相手の同意を確認していくことが大事です。
同意のない性的な行為は重大な人権侵害です。相手と対等な関係でなかったり,断れない状況であったり,はっきり嫌だと言えない状況では,本当の同意があったことにはなりません。また,一つの行為に同意をしていても,他の行為にも同意したことにはなりません。性暴力等は,絶対にしてはなりません。

(4)マタニティ・ハラスメントとは何か
1)マタニティ・ハラスメントとは,
妊娠・出産したことや育児休業等の利用に関する言動により,学習・研究・職場環境が害されることをいいます。
例えば,妊娠・出産・育児休業等に関する制度又は措置(以下「制度等」という。)の利用を上司・同僚・教員・他の学生に相談したり,制度等の申出や利用をしたりしたことにより,解雇・単位の不認定その他不利益な取扱いを示唆すること(「制度等の利用への嫌がらせ型」)や妊娠・出産したこと等に関する言動により学習・研究・職場環境が害されること(「状態への嫌がらせ型」)がそれに当たります。

2)マタニティ・ハラスメントを起こさないために
女性教職員・学生が妊娠をしたときや,教職員が育児休業を希望するとき,最初にそれらを告げるのは多くの場合,直属の上司や指導教員であり,妊娠中や育児との両立をしている教職員・学生と一緒に働き・学ぶのは,同僚・学友たちです。これら人々の間で,マタニティ・ハラスメントが教職員及び学生の個人としての名誉や尊厳を傷つける問題であるとの認識を共有すること,同時に,妊娠・出産した女性又は育児休業を希望する教職員個人の問題にとどまらず,学習・研究・職場環境の課題であるとの認識を共有することが大事です。 マタニティ・ハラスメントはしばしば,妊娠・出産にかかわる無理解,妊娠・出産した女性又は育児休業を希望する教職員と周囲の心理や意識の違い,コミュニケーション・ギャップから生じます。妊娠・出産した女性又は育児休業を希望する教職員への周囲の配慮とともに,互いの意思疎通が容易となる学習・研究・職場環境を作り上げるよう努力しましょう。

(5)アカデミック・ハラスメントとは何か
1)アカデミック・ハラスメントとは,
研究・教育の場において,原則として,教授・准教授など指導上の地位の上の者が准教授・講師・助教・助手・学生など指導上の地位が下にある者に行う嫌がらせで,行為者の意図の有無にかかわらず,受け手が不快と感じ,修学・教育・研究や職務遂行に関して不利益・損害を被ることをいいます。
例えば,1-研究の妨害,2-修学や進路の妨害,3-研究室生活における強制,4-教育の妨害,5-就業上の権利侵害や業務の妨害,6-身体的・精神的暴力がそれに当たります。

2)アカデミック・ハラスメントを起こさないために
研究・教育の場においては,指導と被指導の関係が生じます。そのとき,指導する立場にある者がその関係を権力的に濫用することは,指導を受ける者の信頼を裏切るばかりでなく,大学における研究・教育の自由や自律性の基礎を損なうことになります。これは,指導を受ける者の研究を行う,あるいは教育を受ける権利の侵害となります。指導する立場にある者は,研究・教育本来のあり方を踏み外さないよう十分に注意することが必要です。
指導する立場にある者は,アカデミック・ハラスメントが,研究する権利あるいは教育を受ける権利を侵す人権侵害行為であることを認識し,研究・教育本来のあり方を踏み外すことのないよう十分に注意し,被指導の関係にある者の人権が尊重される良好な学習・研究・職場環境を作るよう努力しましょう。

(6)もし,ハラスメントにあったら~勇気を出して対応しましょう!
もしあなたが,ハラスメントにあった場合,できれば相手に対して,言葉と態度ではっきりと「自分は望んでいない」こと,「不快である」ことを伝えてください。相手が目上の人や上級生であっても勇気を持って拒否し,自分の意思をはっきりと相手に伝えることが大事です。自分一人で言えないときには,親しい友人など周囲の人に話して助けてもらうことも必要です。
ハラスメントにあった場合には「いつ・どこで・誰から・どのようなことをされたか」などについて,記録をとってください。もし,誰か証人になってくれる人がいるときには,その人に後で証言してもらうことの確認をとっておくことが必要です。
もし,自分の周囲でハラスメントにあっている人がいたら,勇気を出して助けてあげましょう。加害者に注意したり,被害者の証人になったり,相談に乗ってあげたり,ハラスメント相談員のところへ同行してあげたりしましょう。

3.問題解決のために

(1)すぐに相談しましょう~相談員が親身に相談に乗ってくれます
ハラスメントにあったときには,不快であることをその場で表現できなかったとしても,自分を責めないようにしましょう。また,一人で悩んだりせずに,すぐに誰かに相談するか,ハラスメント相談員に相談してください。
法人は,ハラスメントについての相談に応じるために,ハラスメント相談員を配置していますので(ハラスメント相談員一覧表をご覧ください。),あなたが最も利用しやすいところへ相談に行ってください。もし,自分一人ではハラスメント相談員のところに行きにくいときには,親しい友人などに一緒に行ってもらいましょう。
相談は面談だけでなく,ハラスメント相談員への手紙・電話・電子メールなどでも受け付けます。ハラスメント相談員のところに行きにくいときには,これらの方法のうちであなたの一番利用しやすい方法でハラスメント相談員に相談してください。(ハラスメント相談員への連絡方法は掲示板や大学のホームページ等をご覧ください。)大学の外にも相談窓口がありますので,ご利用ください。
ハラスメント相談員は相談者の悩みを親身に聴いて,相談者の受けた行為がハラスメントに当たるかどうかを理解することを助けるとともに,今後とるべき方法について,相談者が自分で意思決定をするために必要な相談に応じます。また,必要な場合にはカウンセリングなどの手配をします。
ハラスメント相談員は,相談者の名誉やプライバシーを守りますので,安心して相談してください。

(2)苦情申立て
ハラスメントが起きた場合,その被害者,被害者が幼児,児童,生徒及び学生の場合にはその保護者又はハラスメントの事実を知った人で,法人の対応を求めたい人(以下「被害者等」という。)は,委員会に,苦情申立てをすることができます。
また,苦情申立てをした被害者等(以下「申立人」という。)は,自らの判断により,いつでも当該苦情申立てを取り下げることができます。
ハラスメントにあった場合に,相手方との間での問題を解決するための方法としては,相手方への注意・警告(通知),当事者間での話合い(調停),強制的な措置をとるもの(制裁)の三つがあります。
委員会は,苦情申立てがなされた場合,問題解決のためにどの方法がふさわしいかを,申立人と相談し,また,基本的な事実関係の確認をした上で決定します。ただし,委員会は,事実関係を確認した結果,苦情申立てを受理しないことがあります。この場合には,その理由を申立人に説明しなければなりません。
苦情申立手続において,当事者は,必要な場合付添人(法人等の構成員以外の者でも構いません。)を同席させることができます。
苦情申立ては,証拠や証言の信用性の問題がありますから,できるだけ早く手続をとってください。

(3)緊急措置
相談又は苦情申立てがなされた時点において(場合によっては苦情申立て以降の手続の中途でも),ハラスメントであることが明白であり,その被害が重大で,緊急に被害の拡大を防ぐ必要があるときは,委員会は,加害行為の差止などの緊急措置を取ります。

(4)通知~注意・警告~
通知とは,ハラスメントの被害者等が,その被害の程度に照らして,問題解決のために調停や制裁の手続はとらないが,相手方に対する注意・警告を希望する場合で,委員会がそれを妥当と認めたときに,委員会から相手方に注意・警告を行う手続のことです。なお,この措置は,制裁に該当するものを注意・警告で済まそうというものではありません。
委員会は,申立人及び関係者から事情を聴き,通知の必要があると判断した場合には,相手方に通知をします。ただし,委員会は,事案が重大で,法人として何らかの措置が必要であると判断した場合には,原則として申立人の同意を得た上で,制裁手続に移行することがあります。
通知に際しては,申立人が希望すれば,名前を出したりしないようプライバシーを尊重するとともに,報復措置を禁止するなど十分な配慮をします。
通知は,相手方の所属する部局長及び当該部局の委員の立会いのもとで,ハラスメント防止委員会委員長から相手方に申し渡します。

(5)調停~話し合いによる解決~
調停とは,ハラスメントの紛争を当事者双方の話合いで解決する手続のことです。調停は,委員会の3人の委員からなる調停委員会が進めます。調停委員会は,双方の主体的な話し合いが円滑に進むことを側面から支援することに努め,当事者がハラスメントについての認識を共通のものにすること及び被害の救済を専らとし,問題解決に必要なサポートをします。調停委員会は,調停の進行状況及び諸般の事情を考慮し,調停案を提示することがあります。しかし,どのような内容で合意するかは当事者が決めることであり,その調停案を受諾するかどうかは,当事者が決めることです。
調停の過程において,申立てをされた側が「同意があった」旨の抗弁(言い訳)をしても,それを証明する責任は申立てをされた側に負わせるものとします。また,調停の過程において,被害者の抑圧又は被害事実の揉み消しが行われてはなりません。このような行為があったときには,申立人は当該委員の交替を請求すること又は手続の打切りを申し立てることができます。
調停委員会は,調停が成立したときは合意事項を文書で確認するとともに,委員会に報告します。なお,合意に関連して,法人としての措置が必要な場合には,委員会が対応策を策定し,学長に報告します。
当事者はいつでも調停を打ち切ることができます。また,調停委員会は,相当な期間が経過しても合意が成立する見込みがないと判断したときは,調停を終了させることができます。調停が不成立又は打切り等で終了した場合,被害者は委員会に制裁の要請をすることができます。

(6)制裁~処分などの措置~
制裁とは,ハラスメントの被害者等が法人に対して加害者に対する処分などの措置をとるように求める手続のことです。この手続は,原則として被害者等からの制裁の要請に基づいて開始します。ただし,被害の程度が重大であることが明白で,緊急に法人としての対応が必要と委員会が判断した場合には,原則として,被害者の同意を得た上で,委員会として独自に手続を開始することがあります。
委員会は制裁手続を開始した場合には,速やかに事実関係を調査するために当該事案のみに関する調査委員会を設置します。この委員会は,客観性・中立性・公平性を確保するために,外部から弁護士1人を委員として加え,男女比に配慮し,ハラスメント相談員を委員とせず,また,当該学部・部局の関係者をできるだけ除外するなど委員の構成に配慮して設置されます。
調査委員会は,必要に応じ当事者及び関係者から事情を聴取し,事実関係を明らかにします。この場合,委員は,関係者の名誉・プライバシーなどの人格権を侵害することのないよう,最大限の注意を払わなければなりません。
調査手続の過程において,苦情申立てをされた側が「同意があった」旨の抗弁(言い訳)をしても,それを証明する責任は苦情申立てをされた側に負わせるものとします。また,調査の過程において,被害者の抑圧又は被害事実の揉み消しが行われてはなりません。このような行為があったときには,申立人は当該委員の交替を請求すること又は手続の打切りを申し立てることができます。
調査委員会は,速やかに調査を終了し,結果を委員会に報告します。委員会は,調査委員会の報告をもとに速やかに結論を下し,申立人及び相手方双方に説明しなければなりません。
申立人及び相手方は,委員会の結論に不服がある場合には,説明を受けた日から2週間以内に理由を明示した文書を委員会に提出して不服申立てをすることができます。
委員会は不服申立てに理由があると認める場合,必要があれば原則として1か月以内に再調査を行い,その結論を不服申立人に通知します。なお,この通知に対する再度の不服申立ては認めないものとします。
委員会は当該の事案について結論を出した場合に,申立てをされた者が教職員の場合には学長に,学生の場合には学部長又は研究科長に報告します。なお,当事者の一方が法人等の構成員以外の者であるときには,理事(総務等担当)に必要な対応をするよう要請します。

(7)学長・部局長のとるべき措置
学長は,法人等におけるハラスメントの防止及び排除について統括し,部局長は,当該部局におけるハラスメントの防止及び排除に努めなければなりません。
学長,学部長及び研究科長は,委員会から報告があったときには,直ちに適切な措置をとらなければなりません。
教員の懲戒処分の場合には,教育職員懲戒審査委員会及び教育研究評議会の審議を,職員の場合には,懲戒審査委員会の審議を経なければなりません。
学生の処分の場合には,教授会又は研究科委員会の審議を経た上で,教育研究評議会の審議によることになります。
教育職員懲戒審査委員会,懲戒審査委員会及び教授会又は研究科委員会の審議は,委員会の報告に基づいて行われます。
処分に関する審議に際しては,当事者に意見を表明する機会を保障しなければなりません。
学長は,法人としての対応を被害者に知らせるとともに,被害者の利益を最優先させ,当事者のプライバシーに配慮しながら,経過と結果の概要を学内に公表します。

(8)ハラスメントに対してとられる措置~予防・救済・制裁・研修・環境改善等~
委員会は法人等におけるハラスメントの予防・救済・制裁等のために以下のことを行います。
・新入生オリエンテーション,講義,講演会,研修などの機会を通じて,学生・生徒などに対して,ハラスメントに対する理解を深めます。
・ハラスメントに対する理解を深めるよう役員及び教職員に対して研修を行います。
・ハラスメントが発生した場合に,ハラスメントを単なる個人的な問題として処理することや消極的な対応を取ることがないよう,特に,管理職に対して,研修を行って注意を喚起します。
・毎年度ごとに,ハラスメントの概要(相談件数,通知措置件数,苦情申立件数,対応結果等)を公表し,法人の現状について,全構成員に情報を提供します。公表に際しては,被害者本人の利益を最優先させるとともに,関係者の名誉,プライバシーなどの人格権の侵害にならないよう配慮します。
・適当な期間をおいて,必要な場合には実態調査を行い,結果を公表します。
・被害者に対しては,法人として,心理的ケアを含む,可能な限り最善の救済が与えられるよう努力します。
・ハラスメントの加害者に対しては,その悪質性の程度に応じて,学則や法律に基づく制裁措置をとります。
・セクシュアル・ハラスメントや性暴力等の場合,教職員については,人事院の「懲戒処分の指針について」(平成12年3月31日職職-68)を準用し,次のような懲戒処分を科します。
ア.暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし,又は職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いることや修学上の地位や人間関係などの優位性に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつな行為をした教職員は,解雇又は停職とする。
イ.附属学校教員が幼児,児童及び生徒に対してわいせつ行為を行った場合は懲戒解雇とする。
ウ.相手の意に反することを認識の上で,わいせつな言辞,性的な内容の電話,性的な内容の手紙・電子メールの送付,身体的接触,つきまとい等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した教職員は,停職又は減給とする。この場合においてわいせつな言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したことにより相手が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは,当該職員は解雇又は停職とする。
エ.相手の意に反することを認識の上で,わいせつな言辞等の性的な言動を行った教職員は,減給又は戒告とする。
・苦情の申立てがなされ,ハラスメントであることが認定された場合には,その行為者に,ハラスメントに関する研修を課します。
・再発防止のために必要な場合には,環境改善の措置をとります。例えば,「授業停止」「指導教員の交替」「必修単位の代替措置」「ゼミ・サークルの活動停止」「職場等の環境改善勧告」などがあります。

4.その他の注意事項

ハラスメントのことで法人に相談したり,苦情申立てをしたことを理由に,当該の担当者が相談者に対してハラスメントをしたり,その他の不利益な取扱いをしてはなりません。
ハラスメントの相談や苦情申立てをしたことに対して,苦情申立てをされた側が報復をすることを厳しく禁じます。もし,報復行為がなされた場合には,法人として,直ちに必要な措置をとります。また,苦情申立てをされた者以外の者が,申立てをした者に,何らかの差別的・不利益な取扱いや,嫌がらせなどハラスメントをしたときも同様に対処します。
ハラスメントの相談・苦情申立て・事情聴取等に際して,虚偽の申立てや証言をした者は,学則や法律により処分されます。

5.見直し・改訂

このガイドラインは,年度ごとの運用の状況をみて,必要が生じた場合にはその都度適切な見直し・改訂を行うものとします。