お知らせトピックス2016-069

組成が違っても触媒活性が同等な新規Rh-Cuナノ粒子の電子状態の観測
~合金の複合的な電子状態が寄与することを示唆~

 国立研究開発法人物質・材料研究機構 先端材料解析研究拠点 シンクロトロンX線グループ坂田修身グループリーダー,京都大学大学院理学研究科北川宏教授,大分大学永岡勝俊准教授からなる研究チームは,排ガス浄化触媒活性を持つロジウム(Rh)と銅(Cu)からなる合金ナノ粒子において,Rh組成(ここでは原子数比)が変わっても同等の触媒活性を示すナノ粒子の電子状態を初めて明らかにしました。その結果,ナノ粒子の触媒活性と電子状態が簡単には関係づけられないということがわかりました。今後,触媒活性と電子状態の関係をさらに詳細に解析することで,合金ナノ粒子にRhナノ粒子と同等の触媒活性を持たせるための新たな方法が見つかると期待できます。

 本研究成果はScientific Reports誌にて現地時間2017年1月25日10時(日本時間2017年1月25日19時)に掲載されました。

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概要

 Rh(ロジウム)は自動車などの排ガスに含まれるNOx(窒素酸化物:酸性雨の原因となる)やCOをきれいなガスにして排出する触媒として期待される元素です。しかしながらこのRh(ロジウム)は希少金属であり非常に高価であることから,コストを抑えるために使用量を削減することが求められています。
 京都大学の北川教授のグループは,通常の状態では混ざり合わないRh(ロジウム)とCu(銅)を使用して合金ナノ粒子を作製し,本学の永岡准教授のグループにより,この合金ナノ粒子がRh(ロジウム)の比率を減らしても,Rh単体で構成されるナノ粒子と同じように触媒として働くことが確かめられています。
 合金ナノ粒子を構成する金属の比率が異なれば,触媒の働きと密接な関係のある金属の電子状態が変化すると考えられます。そこで,今回,国立研究開発法人物質・材料研究機構の坂田グループが中心となってRh(ロジウム)の組成が異なる複数のRh-Cu合金ナノ粒子の電子状態を観測した結果,組成によってナノ粒子の電子状態が異なることを観測しました。
 以上から,Rh-Cu合金ナノ粒子では,金属の電子状態が組成に応じて様々に変化することによって,同様の触媒活性を示していることが分かりました。これらの結果は,新しい固溶型の合金ナノ粒子が持つ特殊な電子状態が新機能を作り出す可能性を示しています。

研究内容の詳細について

組成が違っても触媒活性が同等な新規Rh-Cuナノ粒子の電子状態の観測
~合金の複合的な電子状態が寄与することを示唆~


論文情報

タイトル:
Electronic structure evolution with composition alteration of RhxCuy alloy nanoparticles

著者名:
Natalia Palina, Osami Sakata, L. S. R. Kumara, Chulho Song, Katsutoshi Sato, Katsutoshi Nagaoka, Tokutaro Komatsu, Hirokazu Kobayashi, Kohei Kusada, and Hiroshi Kitagawa

掲載誌:
Scientific Reports

掲載日時:
2017年1月25日10時(現地時間)

doi:10.1038/srep41264