お知らせトピックス2017-103

自動車排ガス浄化触媒における貴金属成分の酸化還元挙動の解明
-高輝度放射光を用いた触媒のリアルタイムモニタリング-

 本学理工学部共創理工学科応用化学コース 永岡研究室の佐藤 勝俊 客員研究員(京都大学触媒・電池元素戦略研究拠点 特定助教)が研究グループに加わる,京都大学触媒・電池元素戦略研究ユニット長 田中庸裕 教授,同ユニット 朝倉博行 特定助教らの研究グループは,国内8つの大学・研究機関と共同で,自動車排ガス浄化触媒中の貴金属成分の酸化還元挙動を解明しました。

 本研究成果は2017年12月11日に化学分野における最高峰の学術雑誌といわれるアメリカ化学会発行のJournal of the American Chemical Societyにオンライン掲載されました。

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概要

 ガソリンや軽油などを燃料とする自動車エンジンから発生し,大気中に放出される排ガスには有害物質(一酸化炭素:CO,窒素酸化物:NOx,未燃焼の燃料成分など)が含まれており,これらの有害物質を無害な物質に変えるために貴金属元素(ロジウム:Rh,パラジウム:Pd,白金:Ptなど)を利用した自動車排ガス浄化触媒が使用されています。これらの貴金属は,2012年の年間生産量で見ますと,ロジウムは80%,パラジウムは70%,白金は40%もの割合で自動車排ガス浄化触媒として利用されています。

 排ガス浄化触媒の性能は,使用される貴金属量の影響を大きく受けることが知られており,更に以下の様な背景から,自動車排ガス浄化触媒に使用される貴金属の量を減らすことは世界的に喫緊の課題となっています。

1)自動車排ガスに含まれる有害物質は,環境や私たちの健康に悪影響を与えることから,
 世界的に自動車排ガス排出基準の厳格化が図られている。
2)排ガス浄化触媒には,自動車が走り続ける限り排ガス中の有害物質を無害な物質に変える性能を
 維持し続けることが求められており,性能の低下を補うために大量の貴金属が使用されている。
3)世界中で自動車の販売・保有台数が年々増加しており,排ガス浄化触媒の需要も高まっている。

 触媒に使用される貴金属の量を減らすためには,反応中の貴金属のふるまいを理解することが不可欠です。しかし,自動車排ガスの浄化反応は非常に複雑であり,しかも高温で進むため,貴金属が浄化の仕組みに対してどの様に作用しているのかを直接調べることは困難でした。今回発表された論文では,強力なX線(高輝度放射光)を利用した分析方法を駆使することで,触媒中の貴金属(ロジウム粒子)の酸化還元の過程を,模擬的な排ガス環境の下でリアルタイムに明らかにすることに成功しました。

 今回得られた情報は,現在課題となっている貴金属使用量の低減や高耐久化につながることなどが期待されます。

   【参考図】



図1 触媒上におけるロジウム(Rh)粒子表面の酸化還元挙動(イメージ図)
還元過程(上:Reduction process)では表面がランダムに還元されていくのに対して,
酸化過程(下:Oxidation process)では酸化された箇所が徐々に広がっていく。

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研究内容の詳細について

自動車排ガス浄化触媒における貴金属成分の酸化還元挙動の解明
-高輝度放射光を用いた触媒のリアルタイムモニタリング-


論文情報

タイトル:“Dynamic Behavior of Rh Species in Rh/Al2O3 Model Catalyst During Three-Way Catalytic Reaction – An Operando XAS Study”
(三元触媒反応中のロジウム-アルミナ触媒におけるロジウム粒子の挙動 -X線吸収分光法(XAS)によるリアルタイム分析)
著者名:Hiroyuki Asakura,Saburo Hosokawa,Toshiaki Ina,Kazuo Kato,Kiyofumi Nitta,Kei Uera,Tomoya Uruga,Hiroki Miura,Tetsuya Shishido,Junya Ohyama,Atsushi Satsuma,Katsutoshi Sato,Akira Yamamoto,Satoshi Hinokuma,Hiroshi Yoshida,Masato Machida,Seiji Yamazoe,Tatsuya Tsukuda,Kentaro Teramura,Tsunehiro Tanaka
掲載誌:Journal of the American Chemical Society
doi:10.1021/jacs.7b07114