大学概要学長から贈る言葉

卒業生・修了生の皆さんへ ~学長から贈る言葉~

 晴れて卒業・修了を迎えた皆さん,おめでとうございます。
 例年であれば,卒業式を盛大に挙行するところですが,新型コロナウイルス感染症が終息していない中,皆さんの健康面・安全面を考慮した結果,卒業式は,残念ながら中止することとしました。
 皆さんの晴れやかな門出を直接祝うことができず,私自身断腸の思いですが,どうかご理解ください。

 皆さんが卒業・修了を迎えるに当たっては,経済的に支えてこられた保護者の方はもちろんのこと,先輩や友人,助言・指導いただいた指導教員や職員など,多くの方々の支援があったと思います。大分大学で学んだことを糧に社会で活躍することが,これまで支えてくれた方への恩返しだと思って,日々精進を重ねてください。

 ところで,皆さんにとって「豊かな人生」とはどのようなものでしょうか。どれだけ勲章をもらったか,どれだけお金を儲けたか,人によって価値観は様々でしょう。私自身は「自分が生きている間にどれだけの人々を幸せにしたか。」その数が多ければ多いほど,豊かな人生を送ったと思っています。
 私は今,ロシア・中東・東南アジアなどの国に,私の専門分野である内視鏡手術の人材を育てるため,世界中を飛び回っています。世界には,まだ大きな切開手術の傷跡に悩んでいる人がたくさんいます。 特に若い娘さんにとっては深刻な悩みでしょう。内視鏡手術であれば,傷跡も最小限に済みます。そのことでどれだけの人が救われるでしょうか。その他にも,ピロリ菌の駆除,防災・減災のノウハウなど,私たち大分大学の教員たちは,修得した技術・知識を惜しむことなく,それが必要な人々に提供しています。そこには相手から見返りを求める気持ちなど一つもありません。ただ,一人でも多くの人々を助けたい,その想い一心です。

 昨年,アフガニスタンで志半ばで命を落とした中村哲先生のことは皆さんもご存知だと思いますが,実は中村先生は,平成19年5月に大分大学に来学し,学生のために講演会を開いてくれました。中村先生の残した言葉で「誰もそこへ行かぬから,我々がゆく。誰もしないから我々がする。」というものがあります。私たちの想いも中村先生と同じです。皆さんも,どうか与えられるのではなく,与えることに歓びを感じる人間になってほしいと思います。その想いがきっと皆さんの人生を豊かなものにしてくれると信じています。

 これからの日本は,少子高齢化で国内マーケットが縮小するため,皆さんが就職する企業も,さらに市場のすそ野を世界に広げなければ存続できない時代が来ています。「これまでどおり」では通用しない仕事が皆さんを待っています。時代にあわせて変化と進化をとげる柔軟さが求められていますが,それは大分大学も同じです。まさに,今,大分大学が単独で生き残れるかどうかという改革の嵐の中にいます。皆さんの愛する母校が,これから先も末永く存続するよう教職員一同一丸となって改革を進めてまいりますので,皆さんも,どうかこれからは卒業生として,大分大学を支えていただければと思います。皆さんの,今後のご活躍を祈念して,私の贈る言葉とします。

   令和2年3月25日


大分大学長 北野 正剛