お知らせトピックス2017-009
クリーンエネルギー社会の実現に向けて~
アンモニアから水素を簡単に取り出す触媒プロセスを開発
-触媒への吸着熱を利用した新しい反応の起動方法-
本学理工学部創生理工学科の永岡勝俊 准教授,佐藤勝俊 客員研究員らの研究グループは,室温でアンモニアと酸素(空気)を触媒に供給するだけで,外部からの加熱無しに反応を繰り返し起動させ,瞬時に水素を取り出すことができる触媒プロセスを開発しました。
開発した触媒プロセスの利用によって,水素製造にかかる起動時間の短縮,省エネ化,そして装置の小型化の達成が期待できます。また,基礎的な物理化学現象である吸着熱を触媒層の加熱に利用するという概念は,他のさまざまな反応の起動プロセスへの利用が期待できます。
この研究成果は,平成29年4月29日(日本時間)にアメリカ科学技術振興協会発行の学術雑誌Science Advances(Science姉妹誌)のオンライン版に掲載されました。
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本研究成果のポイント
- アンモニアをエネルギーキャリアとして利用するためには,短時間で起動でき,水素を高速で製造可能なアンモニア分解プロセスが求められていた。
- アンモニアの触媒への吸着熱を利用することで触媒層を内部から加熱し,室温から水素製造反応を起動させる新しい触媒プロセスの開発に成功した。
- 触媒表面の酸点と金属酸化物粒子表面へのアンモニア吸着が,反応起動のためのキーステップであることを明らかにした。
- 本研究成果の応用によって,アンモニアから水素を簡単・瞬時に取り出すことが可能な新しい触媒プロセスを構築することが期待される。
概要
私たちの生活に欠かせない主要なエネルギー源である石油・天然ガスなどの化石燃料は限りがあり,将来枯渇することが予想されています。これに対し,太陽光や太陽熱,水力,風力,バイオマス,地熱などのエネルギーは,一度利用しても比較的短期間に再生が可能であり,資源が枯渇しないエネルギーです。これらは,「再生可能エネルギー」ともいわれます。石油等に代わるクリーンなエネルギーとして,政府は再生可能エネルギーの占める割合を増加させることを目指していますが,再生可能エネルギーの効率のよい利用のためにはまだたくさんの解決すべき課題があることも事実です。
永岡准教授らの研究グループは,1.原料ガス中に酸素を少量加えて発熱反応とする,2.触媒へのアンモニアの吸着熱を利用して触媒層を反応開始温度まで内部から瞬時に加熱する,という2つの新しい概念を導入することで,従来型プロセスの弱点を克服し,アンモニア分解反応を室温から起動させ,水素を瞬時に発生させる新しい水素製造プロセスの開発に成功しました。
またこのプロセスでは1度反応を起動させると,2回目以降は外部からの熱供給がなくとも,繰り返し反応を起動させることができます。
今回開発された技術は,再生可能エネルギーとしての水素エネルギーの利用技術の発展への貢献が期待されます。
【参考図】
研究内容の詳細について
アンモニアから水素を簡単に取り出す触媒プロセスを開発-触媒への吸着熱を利用した新しい反応の起動方法-
論文情報
タイトル:“Carbon-free H2 production from ammonia triggered at room temperature with an acidicRuO2/γ-Al2O3 catalyst”
(酸性のRuO2/γ-Al2O3触媒によって室温で起動されるアンモニアからのカーボンフリーな水素製造)
著者名:K. Nagaoka, T. Eboshi, Y. Takeishi, R. Tasaki, K. Honda, K. Imamura, and K. Sato
掲載誌:Science Advances
doi:10.1126/sciadv.1602747