大学概要令和3年度 入学式 学長告辞

学長メッセージ

令和3年度 入学式 学長告辞

 皆さん,入学おめでとうございます。

 本年は,1,112名の学部学生, 208名の大学院学生の,計1,320名を新しく大分大学の仲間として迎えることができました。入学する皆さんや御家族の皆様に対しまして,心よりお祝いを申し上げます。

 昨年の入学式は,新型コロナウイルス感染症拡大に伴い,残念ながら中止にせざるを得ませんでしたが,今年は,このように感染対策をとって挙行することにしました。2年前の5月に元号が「令和」に代わって,初めての入学式を挙行できることを,皆さんと一緒に喜びたいと思います。

 皆さんにとっては,昨年は新型コロナウイルス感染症に翻弄された受験生活になったことでしょう。高校の学校行事も多くは中止になり,大学のオープンキャンパスも大半がWEB開催という中で志望校を決めなければならず,戸惑うことばかりではなかったでしょうか。入学後も2週間程度はオンライン授業が中心となりますが,その後は,対面授業の比率を増やしますので,感染予防対策をしっかりとりながら,緑豊かな本学のキャンパスで新たな学生生活を始めてほしいと思います。

 さて,皆さんが大学生として新生活を始めるにあたって,私から二点お願いがあります。

 一つは,健康的な生活を送ってほしいということです。毎年,約7割の新入生が,自宅を離れ,学生寮やアパートで一人暮らしを始めています。高校時代と違い,大学生は自由な時間が増えますが,起きたいときに起き,寝たいときに寝るという不規則な生活に慣れてしまうと,社会に出てから簡単に切り替えができなくなります。どうか,健康的で規則正しい生活を送るよう心掛けてください。
 特に,喫煙は深刻な健康被害をもたらします。国立がん研究センターの発表によると,日本全国で喫煙による年間死亡者が15万人,そのうち,受動喫煙が原因で1万5千人が亡くなっています。昨年の交通事故による死亡者数が2,839人ですので,喫煙がどれほど健康に有害であるか分かります。
 加えて今年の10月には,私自身大会長として,大分県で日本禁煙学会学術総会を開催します。大分大学は学生や職員を煙の害から守るため,敷地内全面禁煙は勿論のこと,教職員の勤務時間内の喫煙禁止,教員の採用に当たって非喫煙者を優先する等,全国でも先進的な禁煙活動に取り組んできました。大分大学の学生だからこそ,ニコチン依存症は深刻な病気であることを正しく理解してください。ここにいる多くの皆さんが生まれた2002年は,日本で初めてサッカーのワールドカップが開催された年です。日本のスポーツ史に燦然と輝く年に生まれた皆さんには,末永く健康な人生を送ってほしいと願っています。

 もう一つは,大学生の間に,何か新しいことにチャレンジしてほしいということです。これまでは,勉強や部活動など,あらかじめ敷かれたレールの上で頑張ってきたという方が大半ではないでしょうか。入学後は,是非,自ら高い目標を設定し,その達成に向けて努力してください。
 2年前の入学式では,日本フェンシング協会会長の太田雄貴さんを招いて特別講演を行いました。2008年北京オリンピックのフェンシング男子フルーレ個人において銀メダルを獲得した有名な選手で,私が大分県フェンシング協会会長を務めているご縁で招待しました。太田氏は,新入生に向かって,「学生時代に困難な目標に向かってチャレンジし,成功体験を身につけてほしい。例え失敗しても,それは失敗ではなく未達だと自分に言い聞かせること。今日届かなかった事が問題なのでは無い。届くまでやり続ける事が大切です。」と語ってくれました。もちろん,懸命に努力したからといって,誰しも太田氏のようなメダリストになれるわけではありません。しかし,なりたい自分になるための努力を続けた経験は,たとえ叶わなかったとしても,人間としての強さや深みを与えるものです。
 皆さんがこれから大学で学ぶ知識は,大半が過去に作られたものです。偉大な学者や科学者が,何度も失敗や挫折を繰り返して完成させた「知の結実」を,次の世代に引き継いでいった。それが学問の歴史です。先人達の,倒れても何度でも立ち上がる生き様の上に,皆さんの学びが成り立っていることを理解してください。「学生時代の失敗は,すべて成長のための肥やしである。」と自分に言い聞かせ,様々な挑戦をしてほしいと思います。

 皆さんが,健康かつ意欲的な学生生活を送り,やがて社会に大きく貢献する人材に育ってくれることを心から願って,私の告辞とします。


   令和3年4月6日


大分大学長 北野 正剛