スペシャル対談企画~女性活躍の推進~

スペシャル対談企画~女性活躍の推進~


と き:平成28年11月7日
ところ:大分大学旦野原キャンパス 事務局棟第2会議室

はじめに

現在,国立大学は大きな変革の時期にあり,社会から国立大学の存在意義が問われています。 そのような中,大分大学では本学が地域社会において果たすべき役割とは何かという観点から改めて問い直し,平成28年4月には福祉健康科学部の新設,教育福祉科学部を教育学部に改組,平成29年4月には,工学部を理工学部に改組,経済学部に社会イノベーション学科を新設するなど,地域社会の担い手としての存在価値を示してきました。本日の対談では,政府の成長戦略の一つにも位置付けられている女性の活躍促進について,本学の諸課題や取組状況などに対し,大分県を代表する,社会で活躍する女性でいらっしゃる桑野様のご意見をいただきながら,改めて本学が果たすべき役割を考え,日本社会の担い手としての本学の存在価値を示してまいりたいと思っています。

進行は松浦が務めさせていただきます。

日本社会における女性活躍の現状

進行 松浦副学長
まず日本社会全体における女性の活躍について話を進めてまいりたいと思います。
少子高齢化の進展に伴う労働人口の減少,イノベーション,グローバル化への対応など,日本社会を取り巻く環境が大きく変化する中,政府の成長戦略の一つとして女性の活躍推進が求められています。
桑野様は,大分県を代表する女性経営者として日本全体におけるこのような状況をどのように捉えておられますか。

桑野 玉の湯取締役社長
皆さんこんにちは。由布市の由布院で玉の湯という小さな旅館を経営しております。同時に由布院の観光協会長や社外の委員等を務めておりますが,私自身,大学を卒業してから地域づくりを続けてきたことで今日があると思っています。今,少子高齢化,人口減少社会と大きく日本の社会が変わる中で,女性が良い社会・良い地域の中で存在できることで,日本社会の大きな未来が見えてくると思っています。そういう面では国の施策が大きく動いている中で,今やらずしていつやるんだという思いです。私は大分県の中で大分大学が果たす役割は非常に大きいと思っております。今日は北野学長から色々な話を伺えることを楽しみにしています。お話を伺いながら私も地域の一女性経営者としてお話をさせていただけたらと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。


ありがとうございます。それでは北野学長は,経営者であり教育者として,社会や大学などで女性活躍が推進されることに関しまして,どのように捉えていらっしゃいますか。


北野 大分大学長
今日は大分大学の女性の活躍促進に向けた取組に対して桑野さんに色々なご意見・ご示唆をいただき,それを踏まえた上で皆さんと相談しながら大分大学の女性活躍の場を様々な形で推進できればと,この機会を楽しみにしていました。
私が生まれたのは1950年ですが,そのころの世界の人口は25億人でした。ところが,2015年には73億人,約3倍に増えている。一方,日本の人口は2008年をピークに人口減少社会に入ったと言われています。先週,私が会長を務める国際学会の会合で,隣に座っていたヨーロッパの代表者から「日本は色々な形で世界のモデルになっている。人口が減ることで日本が衰退していくことは非常に寂しい。」と言われました。若干の人口減少は仕方がないとしても,日本がこの先も発展していくには,そして世界に日本の存在感を示し続けるためには,女性の皆さんに活躍の場をぜひ持っていただきたいと思います。これからは,各々の人生設計の中で時期的にも,あるいは時間的にも色々な働き方ができるような方針が必要だと思います。


先ほどのご発言に関しましては何かご意見がございますか。



それぞれの事情に合わせて効率的に働くということは,多様な働き方ができることが前提だと思います。制度があっても活かされないという社会の中で,学長がおっしゃったように多様性に対してどれくらい丁寧に,大学,企業,地域が一緒に考えていけるかということが大事だと改めて思います。

女性活躍への期待


それでは,具体的に女性の活躍や期待について伺います。それぞれのお立場から女性の活躍が経営にもたらす影響について,また期待されることなどについてお聞きします。まず桑野様に伺いますが,旅館経営では女性の目線を活かした宿づくりなど活躍の場が期待されると私どもからは思われますが,女性が活躍することによってどのようなことがもたらされるとお考えですか。

私は,28歳の時に由布院に戻ってまいりまして,出産後4か月目から仕事に復帰して,仕事と子育てが始まりました。女性の活躍と言いましてもいくつかの視点があると思いますが,仕事の面から言えば,子供を育てながら旅館経営をしていますと,子供という目線が入ったことによって,宿がそういうところに目が行き届いてなかった,一番のごちそうはもしかしたら安全安心ではないかということを考えるようになりました。このことは言い換えれば障がいのある方に対しても,またご高齢の方に対しても同じです。加えて,女性は「今までこうだった」という固定観念があまりないと思います。私も比較的いいと思ったことは取り入れていくようにしています。もう一つ,旅館経営というと女性が向いていると思われるかもしれませんが,私が戻った当時,日本の中に女性の若手経営者はまだいませんでした。27,8年前です。だからこそなんでもできるということが最初から前提にありました。また,10年ほど前に,大分県の観光協会長もしましたが,それも全国で最初でした。大分県観光を多様な観光にするためには女性の視点や小さなエリアの考え方も必要だとのことで,私にお声がかかったのではないかと思っています。でも今は当たり前のように女性が社会で活躍しています。社会には様々な価値観があります。経営の面でも,私が女性だからということよりも,これまで考慮されてこなかった目線であったり,多様性を大事にしていくことが重要だと思っています。

それでは北野学長,大分大学としてはいかがでしょうか。



桑野さんは大学を卒業後,大手のホテルでマネジメントを経験され,そして地元にお帰りになるという経歴ですので,おそらくその経歴がずっとつながっていて,県の施策に関しても影響を与えることができるのだと思います。経験が生きるということですよね。ところで,『話を聞かない男,地図が読めない女』という有名な本があります。先ほど桑野さんがおっしゃったように女性ならではの気づきが様々なところであるんです。男はあまり頓着しない。男性の一方に向かっていく性格と,女性の色々なところに気を配りながら様々な要素を取り入れていく性格と,これはまさに男女共同参画の大きな方向性だと思います。また,女性の活躍に関して身近に思うのは,医療人特に看護師さんは女性が多いですし,さらにはリケジョについては,女性の特長でいうなら,理系の中でも化学や生物,建築分野が女性の方向性に合っているという話を聞きます。女性の特長を活かす分野を選択できやすくするような規則や手当で,ぜひ多くの女性に活躍して欲しいと思います。

やはり「ものづくり」の分野では,女性の力を活かさないといけないんですが,日本はまだまだ少ないということで,国を挙げてリケジョを増やす取組を今やっているところです。今のご発言に対してはいかがですか。

うれしいですよね。今まで女性が少なくても,実は女性が合っている分野もまだあるんですね。多様なところで今,女性が活躍している,でもそのためには女性にそった制度が必要だと思います。大学には,様々な職種の方がいらっしゃいますので,大分大学にはぜひ先頭に立って進めていただきたいと思います。

お二人がおっしゃったように,女性の活躍は経営などに活かされると思いますが,では管理職への登用ということで,桑野様は社長として,管理職のトップとして旅館・観光業界,他の企業なども鑑みまして女性の管理職登用,その課題や重要性についてのお考えを教えてください。

管理職に関していえば,男女雇用機会均等法が制定された時代に入社した方々が管理職の年齢になっています。その人たちが色々なところで活躍されていると思いますが,残念ながらまだボリュームが少ない。分野や業界を越えてネットワークが生まれたり,それぞれの働き方も含め,伝わっていくことで勇気づけられると思っています。また本当は働きたかったかもしれない多くの人たちがなぜ辞めざるを得なかったか,その背景が何であるか,プロセスが何であるか。そういうことを検証することも大事ではないかと思っています。

北野学長,大分大学での管理職としての女性登用についての現状や重要性についてお考えを教えてください。


大分大学の現状を申しますと,役員に占める女性の割合は8名中1名の12.5%。管理職に占める女性の割合は37名中3名の8%です。また教授職に占める女性の割合は164名中21名の12.8%です。私としては,これらの数値はまだ上げるべきだと思っています。本学が女性活躍推進法に基づいて策定した行動計画で言いますと,課長級以上の管理職に占める女性の割合を15%以上,そして教授職に占める女性の割合を17%以上という高い目標を掲げて取り組んでいるところです。教職員の皆さんがそれぞれの場で活躍して教授職・管理職になっていただきたいと思います。

やはり数値目標を定めることは重要で,その達成のために取り組むことによって,もしかしたら達成年度が早まることがあるかもしれません。


私自身,教授時代から「その日にできることは午前中に終わらせろ」と言っています。というのは,もし何か事があっても,余裕を持って対応することができますから。ですから,できるだけ早く目標設定の年を待たずに達成したいと思います。

大分県の中で,大企業といえるところは県庁,市役所,銀行,もう一つは大分大学だと思います。この大分大学の女性比率の向上というのは他の企業よりも達成可能な目標であってほしいと思います。なぜ大学にそういう期待を持つかというと,これから社会に出る人たちが企業や地域という前に大学という場所で女性が実際に活躍している姿に出会うことが大事だと思いますので,県民として大分大学には大いに期待します。


女性の活躍への課題について


大変力強い励ましの言葉をいただきました。次に,女性の活躍への期待は大きいですが,とはいえ活躍を阻んでいるものがあるからこそ,日本全体の戦略としてやっていかなければいけないのだと捉えることもできます。女性の活躍を阻む特に大きな課題として,皆さま方がよくご存じなのが妊娠・出産・育児,その後の職場復帰の問題。それから上司の意識,両立における環境の問題などですが,ご自身の経験なども踏まえましてご意見をいただけたらと思います。

まず女性は妊娠・出産がありますが,その後に今話題の,保育園に入れるか,次に小学校に入ると放課後の子供をどうするか,という問題があります。子供を抱えている女性が働く上で必要な制度については企業でできることだけではありませんが,地域の中でもそういう制度がないという現状があると思います。それから大分大学は病児保育をお作りになっているということですが,必要と言われながらもまだ少ない状況です。一般にニーズとのギャップが大きい中で男性の育児参加も含めて,男女が共に協力できる体制の整備が重要になると思います。もう一つ意識の面でいえば,男性による議会などでの女性蔑視の発言などありましたが,それは社会の中で女性が子供を産み育て働くということ,また,女性に多様な選択肢があるということに対して,社会がついていけていない現状があると思います。制度の問題と意識の問題が課題であると思っています。

北野学長いかがですか。



今,桑野さんがおっしゃったように,制度と意識の問題は大変重要です。例えば意識の問題ですと,大分県の調査では男は外で仕事,女性は家庭を守るという意識がまだ50%近くあり,県の策定した方針では平成32年までに65%までその意識を変えようという動きも進んでいます。もう一つは制度の問題。体制整備という点では,なかよし保育園を挾間キャンパスに作りました。さらには病気になった子供を預かる「ひだまり(病児保育室)」も作りました。皆さんがいつでも安心して子供さんを預けられる,安心して仕事ができる,状況に応じた働きやすい環境を整えたいと思います。

大分大学の病児保育は年間延べ約500名の子供を預かっており,この規模の大学では非常に利用者数が多いという状況です。「ひだまり」の大きな特徴として,病気の種類を限定していないこと,例えば病名がついていなくても預けることができる病児保育は日本ではあまりないんです。多くの方に利用いただけることは,設置に携わった者として大変ありがたいと思っています。

ぜひアピールしていただければと思います。病気の種類を限定せずに誰でも預かるということは大分大学ならではの素晴らしいことだと思います。大分大学の取組をもっと社会が知ると,社会の中で大分大学に倣って自分のエリアでもやってみようということにつながるかもしれない。大分大学の良い試みがより多く地域に広がればと願っています。

先ほど社会の理解と言いましたが,上司の理解も必要です。子供が熱を出したときなどに「また帰るの?」と言うのではなくて,そのときは「もちろん帰っていいですよ,また今度これをお願いするから」というように意識を変えてお互いに理解しあうことが必要だと思います。そのようなことが活き活きと活躍できる状況を作るわけですから,上司の意識改革も重要だと思います。

女性が活躍できるためには,そういった働きやすさを求めるということも必要だと思います。旅館経営において仕事のあり方や働きやすい環境づくりのために考えていらっしゃることはありますか。


少子高齢化だといって,今少子化に向けて様々な施策を打っても数年後にしか成果が挙がらない中で地域社会がどういう人材を捕まえていくのか。地域にいて思うことは,一旦子育てで辞めても数年して働きたくなったときに,その人たちが戻ってくる環境を整えるということです。なぜそれが大事かというと,教育を受けて辞められているという点です。教育期間というのは,企業にとっては重いんです。その方々が復帰してくれるのであれば, 6時間,8時間働かなくていい。人によっては2時間でも1時間でもいいと思っています。キャリアを積んだ女性で,まして子育てを経験した年齢の人が観光産業においても非常に重要です。だからそういう人たちが戻ってくることができる職場にするためには,私たちも勤務時間の問題や,突然の退社など,色々なことをすべて飲み込んでいく。でもそれが全体として企業にとってはプラスになってくる,プラスになるということは私どもの業界でいえばお客様の満足度が上がる,このようなことに力を注いでいます。モデルができていくと,現在働いている方たちも一度辞めたり,どこか遠くに行ったりしても戻ってきてくれるということもあり得るのではないかと思っています。ですので,小さな地域の小さな企業にできることとして,多様な働き方を,できることを時代に沿ってやっていきたいと思っています。

大変素晴らしい取組を聞かせていただきました。それでは北野学長,大学はどうでしょうか。



教育を受けたということも含めて経験は社会資産です。せっかく能力を持って活躍しているのに子育てなどをきっかけに辞めてしまうと大変損失が大きい。経験を持っている方には,一時子育て,妊娠等でお休みになってもいずれまた帰っていただきたい。実際私の妻も1年くらい休みましたけど,また小児科医として復帰しましたし,その後もずっと続けて働いています。周りがサポートすることで,復帰が可能になってきているし,皆さんご存じのとおり情報通信など技術の進歩は目覚ましいものがあり,近い将来には情報共有がリアルタイムにどこにいてもできる時代になってくると思います。多様な働き方の一つの例になりますけど,そういう働き方が可能になると思います。


社会を担う学生を育てる大学に期待すること


やはり女性の話だけではないということで,アウンサンスーチーさんが来日された際,蓮舫議員と女性の活躍についての話になり,蓮舫議員の「どうしたら女性が活躍できますか」という質問に,一言「男性が育児をすればいいのよ」とおっしゃったというエピソードがあります。男性の育児参加について取り組まれていることはありますか。

男性が育児休暇を取る姿が女性にとって働きやすい環境につながるのではないかと思います。そういう面では男性の育児に関すること,気持ちだけではなく,実際に休むことにも挑戦していただきたいと思います。


実は今朝の会議でも介護休暇が話題にあがりました。介護休暇は短期間で取ってもいいですし,午前2時間,夕方2時間とかいうのでもいいのではないかと私は思っています。それが介護休暇だけではなくて,子育てのための休暇,あるいは様々な状況に応じてバラエティに富んだ時間配分ができるような働き方が望ましいと思っています。

介護の問題は誰もが関わることなので,男性も含めて参加することによって,女性が子育て中で休んだときの気持ちが分かりますよね。お互いに気持ちを理解し合うことがまだ日本社会で足りないのであれば,一緒に考えていくことが大事だと思っております。

大分大学は研究サポーター事業というものを行っており,女性だけではなく男性も育児,介護で利用されたことがあります。少しずつではありますが,男性の育児・介護参加に関する取組も進めており,実は行動計画で男性の育児休業取得率10%の目標を設定しています。
続きまして,学生を育てるということが大学としての使命の一つですが,学生に対すること,女性の活躍促進や男女共同参画の推進について大学への期待などありましたらお聞かせください。

今学生の皆さんが大学卒業後の進路を選択する中で,女性であることがマイナスになることはない時代だと思います。一方,社会に出ると,そうでない部分もあるかもしれない,でもそれは皆さんが時代の中で自分たちで拓いていくことだと思うんです。切り抜ける力とか,社会の中でハードルがあったときにそれをどう超えていくか,そういうことを大学側が教育することも大事だと思います。私が大分大学に期待したいという思いを持つのは,大分県の女性経営者や企業の役員の構成を見ても本当にまだ女性が少ない。そういった中で大分大学は知の拠点でありますし,大学の役割の一つとして,女性たちがどのように社会の中で動いているのか,そのモデルになっていただきたい,そのような大分大学を見て学生さんは希望を持って社会に出られるのではないかと思います。その面では,大分大学には男女共同参画の先を見据えた取組を展開していただけたらと切に願っています。

桑野様からは大きな期待をいただきましたけれども,大分大学長として次世代を育てるために,女性活躍,男女共同参画の推進などへの意気込みを聞かせてください。


次世代への意気込みは,この部屋を充満する,あるいは世界を充満するくらいたくさん持っています。今,松浦副学長が男女共同参画の責任者として様々なサポートや取組を行っていますし,学外から著名な方をお呼びして情報提供していただいています。それらを学ぶことによって大分大学の男女共同参画の取組もかなり進んできました。今後も先進的な大学から情報を得てそれらを活かしながら,追いつき追い越せという意気込みで男女共同参画,女性活躍の場を広げていきたいと思っています。

ありがとうございます。学生に対しても平成 26 年 10 月から全学部生を対象に,全学共通科目「男女共同参画入門」の授業を開講しましたし,挾間キャンパスでも新入生全員が受けられる講義が今年度から始まったところです。また,高校生,あるいは中学生へもさまざまなアプローチをしているところです。

女性活躍が社会の共通の言葉になっている中で,大分大学ならではというところを期待しています。同時に女子学生だけでなく男子学生の皆さんが頭の柔らかいうちに,どれくらい女性活躍というものが自分たちの社会を良くするか,授業をはじめ,様々な場面で一緒に学んでいくことは非常に必要だと思います。
今,企業のトップの方のお子さんたちが企業の第一線で子育てと仕事に臨んでいる年代になっています。そうするとお子さんたちが苦労している姿を見て,変えなければいけないと思われるという話をよく聞きますが,身近にそういう人がいると考えられる。それは男女問わず一緒だと思います。そういう機会がないとなかなか考えていけないのが女性の活躍の問題だと思います。


観覧者との意見交換,質疑


本日は挾間キャンパスからもたくさん来ていただいており,教職員そして学部生,大学院生の方々もたくさん来ていますので,質疑応答あるいは意見交換という形にしたいと思います。

観覧者A 大変興味深く聞かせていただきました。昔は仕事を続けたいのに相手が反対して,しょうがないから辞めるという女性が多かったのですが,今は就職の状況が悪くて仕事もきついので,こんなに苦しいんだったらお金持ちで気の優しい人を見つけた方がという人も結構多いという話を聞きます。女性の中でも頑張る人と,お金持ちの夫の方が楽でいいという人がいると思いますが,どのようにお考えでしょうか。

働いて苦しい思いをするよりもお金持ちの男性を見つける方が楽という考えももちろんあると思いますが,一方で職場を含めて働く環境が女性にとってあまり良くないからこそ,このような気持ちになってしまう面もあると思います。大学までは男女が同じ条件だったものが,社会に出た途端,男性が諦めずに続けられることでも女性が諦めてしまっている状況を見て自分も諦めてしまうということがあるのではないでしょうか。現在の閉塞感のある女性の労働環境が改善されれば,女子学生の考えも変わっていくのではないでしょうか。


観覧者B 今日は非常に貴重なお話をいただきありがとうございました。研究者の話になりますが,女性が少ないという話がありましたが,実際ロールモデルとなるような先輩が非常に少ないです。そういった中で,先ほど北野学長もおっしゃっていた妊娠後の復帰について具体的にどういうふうにされているのかというのが非常に今気になることです。

例えば,3,4年臨床をして,出産・育児で1,2年休む場合,その間医学的な勉強,基礎医学など英文,論文も含めた勉強を続けて,復帰するときにはアップトゥデイトな知識を蓄えていればスムーズな復帰につながると思います。そのためのプログラムやサポートを大学として整備することも必要だと思います。そういうシステムやインターネットの活用などで,新しい情報に触れていくことが大切ではないでしょうか。

本当にその通りだと思います。復帰と考えると重く考えがちですから,1日30分でも構わないので続けること。インターネットを活用するなど,どのような形であれ離れないことが最も重要ではないかと思います。


どの業界でもと思いますが,専門性の高い職業の方たちは離れると不安になるということを伺います。つながり続けることができる仕組みは重要で,特に研究者が多い大分大学では,その仕組みを持っていただくことが大事なことだと思いました。

観覧者B 復帰に関してですが,下の者から上の先生に復帰させてくださいと申し上げることに非常に抵抗があるので,戻ってきてほしいという人には声掛けをしていただけるとありがたいと思います。

休む前に,「一年たったら戻ってきたい」と言えばきっと歓迎されると思いますよ。



会場から上がった切実な声に学長が答えられる場面はすごく建設的でいいなと聞きながら思いました。この対談の目的のひとつは,この場にいない人たちにこうしたキャッチボールを伝えることだと思います。


こういう専門性を持って育った方は活かしてほしいし,大分大学のためにもぜひ続けてほしいと思います。ぜひ帰ってきてください。


観覧者B ありがとうございます。不安に思っている同じくらいの世代の人がたくさんいますので,本日の対談の内容を伝えていただければと思います。

今日はいろんなご意見も聞くことができ,有意義な時間となりました。最後に拍手でこの会を終わりたいと思います。ありがとうございました。

対談者と女性聴衆者


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