学生生活学生生活実態調査結果

学生生活実態調査結果の概要の公表にあたって


大分大学理事(教育,入試,学生・留学生支援担当)
藤井 弘也

 大分大学では、学生の日常生活やキャンパス内の施設、カリキュラムなどに対する満足度を把握し、大学としての修学指導や福利厚生に関する課題や改善方策を検討するための基礎資料とすることを目的として、1983(昭和58)年以降「学生生活実態調査」を実施してきました。本報告書は、その14回目にあたり、2021(令和3)年に実施された調査の概要をまとめたものです。
 以下の調査結果の概要は、『学生生活実態調査報告書2021年度(令和3年度版)』第9章 学生生活実態調査結果の注目点を掲載したものです。
 なお、学生生活実態調査結果を受けて、全学レベルあるいは部局レベルで必要な対応を講じるべく、作業を進めています。

2021年度(令和3年度) 学生生活実態調査結果の概要

 1. 調査方法

 2021年度は調査票の項目について検討・決定した後、2021年12月中旬から 2022年1月下旬にかけて、Googleフォームを利用したWeb調査として実施した。回答者数は2,944名で、回答率は 56.1%である。これは、前回調査(2018年度)(回収枚数2,834枚、回答率 50.6%※紙媒体)より改善している。

 2.学生生活実態調査結果の概要

1)全体的な満足度について
 学生生活に対する総合的評価と考えることができる大学生活の満足度(質問76)は、今回の調査では、肯定的評価が75.9%(「満足」22.7%、「やや満足」53.2%)であり、いずれの学部も7割以上であった。肯定的評価は、前々回調査(2015年度)では73.3%(「満足」21.4%、「やや満足」51.9%)、前回調査(2018年度)では75.4%(「満足」24.1%、「やや満足」51.3%)であり、前回は約2ポイントの上昇が見られたが、今回は前回と同水準であった。
 自由記述欄については、前回と同様に、「教育・授業に関すること」および「施設・設備に関すること」が多く記載されているが、今回は、前者について、オンライン授業に関する要望や困りごとの記載が多く見られ、後者についても、駐車場の拡充や施設・設備の老朽化に関することに加え、コロナ禍での図書館の利用制限に関する記載が見られた。また、「経済問題(授業料、奨学金等)に関すること」では、オンライン授業でも授業料が変らないことに対する不満が複数あった。このように、今回は、2020年以降のコロナ禍の影響を反映した自由記述が多く見られた。
 学生の満足度を今後一層上昇させていくためには、学生の声に耳を傾け、教育内容・方法の改善に努めるとともに、学生生活の快適性・利便性を高める施設の改善、変化の激しい社会経済状況に対応した学生支援を臨機応変に行っていくことが重要であると考えられる。

2)学生の経済状態、家庭からの給付とアルバイトの関係について
 学生の経済状態の感じ方(質問20)を見ると、余裕がないと感じている学生は27.4%(「やや苦しい」21.8%、「苦しい」5.6%)で前回調査の19.6%(「やや苦しい」14.9%、「苦しい」4.7%)と比較すると、約8ポイント増加している。質問11の平均的な月の生活費(収入合計)を見ると、9万円未満の学生が前回調査と比較して10ポイント以上増加している。これらのことから、この3年間で、学生の経済状態が悪化していることが伺える。
 収入の内訳については、家庭からの給付額(質問7)が3万円以上の割合が、前回調査の49.9%から57.3%に増加しており、特に学生寮・国際交流会館や下宿・アパート等に居住する一人暮らしの学生について、家庭からの給付額が前回より大きく増加している。一方、最近1年間のアルバイト経験(質問25)がある学生は、前回調査の84.3%から81.2%に減少しており、アルバイトや定職による収入(質問9)が0円の学生は、前回調査の18.8%から23%に増加している。これらの変化は、コロナ禍に伴い、アルバイト探しに困難を抱えた学生・院生が13.3%いたこと(質問70)やアルバイト収入に減少があった学生・院生が34.3%いたこと(質問71)と関係していると考えられる。
 こうした変化はあるものの、アルバイトに収入を依存する学生の割合が8割を越える状況は続いており、家庭からの経済的支援にも限界があることを踏まえると、学生が経済的事情により、勉学を中断したり断念したりすることのないように、大学としても引き続き学生の経済状態の改善に資する支援を行っていく必要があると考えられる。

3)教育・勉学費について
 授業料を除く教育・勉学費(質問15)について、前回調査では、月0円が29.7%、月5千円未満が24.3%であったが、今回は月0円が19%、月5千円未満の割合が34.1%となっており、教育・勉学に費用をまったくかけない学生の割合は、約10ポイントの減少が見られた。

4)ローンや借金について
 「ローンや借金がない」と回答した学生(質問21)は、今回は93.2%であり、前回調査の91.4%から少し増加した。一方、借金をした学生の理由(質問22)については、「学費や勉学のため」が前回調査では3番目であったが、今回は2番目になっており、しかも、当該理由を選んだ学生の4割強が50万円以上の借金をしている点が憂慮される。

5)アルバイトについて
 週平均で10時間以上のアルバイトをしている学生(質問27)は、前回調査では67.4%だったが、今回は60.8%と減少している。アルバイトの種類(質問26)については、前回調査では、1番が「ウェイター・ウェイトレスなどの接客業」(53.4%)、2番が「販売・店員」(32.2%)であったが、今回は1番が「販売・店員」(39.8%)、2番が「ウェイター・ウェイトレスなどの接客業」(35.8%)と大きな変化が見られた。これらの変化は、コロナ禍の影響によるものと考えられる。アルバイトの目的(質問28)では、前回調査と同様に、「生活費」が1番(34%)であるが、前回と比較すると、「授業料・本等の勉学の費用」や「実務経験・社会経験」が増加している点が注目される。アルバイトの探し方(質問29)では、「インターネットや斡旋業者」が48.8%と前回からほぼ倍増した一方、「新聞・情報誌の広告」は、4.4%と大幅に減少した。また、授業を20%以上欠席した理由(質問31)を見ると、アルバイトを理由に挙げた学生の割合は全学平均で約1%であり、ほとんどの学生は授業の出席に影響の無い範囲でアルバイトをしているものと考えられる。

6)授業への出席率について
 授業出席率が「80%以上」と回答した学生(質問30)は、全学平均で92.6%と、前回調査の85.6%を大きく上回り、9割を超えた。出席率は、近年の調査で上昇傾向が続いているが(2012年度調査:81.0%、2015年度調査:85.3%)、今回の調査結果には、コロナ禍に伴うオンライン授業の増加が影響している可能性がある。
 授業を20%以上欠席した理由(質問31)については、前回調査では、「朝寝坊」、「講義がつまらない」が多かったが、今回の調査では減少しており、代わりに「勉学する意欲がわかない」がほとんどの学部で上昇している。これもコロナ禍による影響が考えられる。

7)授業以外の学習時間について
 授業以外の学習時間が「ほとんどない」と回答した学生(質問32)は、前回調査では増加傾向にあったが、今回は、一転してすべての学部と大学院において減少した。また、授業以外の学習時間が「3時間以上」と回答した学生も、ほとんどの学部において増加しており、これらの点では、望ましい変化が見られた。コロナ禍に伴い、オンライン授業が増加したことにより、従来の対面授業よりも予習や復習に必要な時間が増えた可能性がある。

8)施設設備への満足度について
 施設に関する満足度(質問39~42)については、肯定的評価の割合(「満足」と「やや満足」の回答の合計)は、講義棟(冷暖房)で74.6%、講義棟(建物・講義室)で67.3%、図書館で69.8%、食堂・売店・コンビニエンスストアで62.3%であった。前回調査では、肯定的評価は、講義棟(冷暖房)で71.5%、講義棟(建物)で60.5%、図書館で69.2%、食堂等で55.4%であったため、図書館は前回からほぼ変わらないものの、それ以外は、いずれも上昇している。特に食堂等は前回調査においても、前々回調査から大きく上昇していたが、今回も約7ポイントの上昇が見られた。

9)不満がもたれている施設について
 保健管理センター、体育施設、サークル施設、駐車場については、いずれも肯定的評価の割合(「満足」・「やや満足」)が前回調査から減少している(質問43~45、48)。保健管理センターに対する肯定的評価は、51.9%と50%をわずかに上回ったが、体育施設は40%、サークル施設は36.1%、駐車場は31.1%といずれも50%を大きく下回っている。体育施設やサークル施設については、施設の老朽化問題に加え、コロナ禍による利用制限が影響している可能性がある。駐車場については、医学部の学生の肯定的評価が極端に低く(11.7%)、前回調査(17%)からさらに悪化したが、挾間キャンパスでは駐車場増設計画が進んでおり、次回調査では改善することが期待される。
 自由記述には、施設の老朽化、清掃、利便性・快適性に関する意見が多く記載されており、これらの指摘を踏まえて、継続的に改善に努めることが望まれる。

10)学内・学外のグループ活動への加入状況について
 「学内の体育会・文化会・サークル協議会加盟のサークル(部)へ加入している」とする割合(質問49)は、46.2%であり、前回調査の51.1%と比較して、約5%減少している。また学内外のいかなるグループ活動にも「加入していない」割合もすべての学部において10ポイント以上上昇している。これらもコロナ禍に伴うグループ活動に対する各種制限の影響が考えられる。

11)いじめ・ハラスメントについて
 いじめ、セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント、飲酒による被害(質問53~質問56)は、いずれも前回調査と比較すると、被害を受けたことがないとする割合が増加しており、改善傾向にある。ただし、被害を受けた学生が一定数いることは大変由々しき問題であり、特定の学部での被害が多いことも伺える。学生がいじめ・ハラスメントの被害を受けることなく、安心して学生生活を送ることができるように、大学全体と各学部で適切な対策を講じていく必要がある。なお、セクシャル・ハラスメントの被害を受けた状況(質問54-3)については、前回調査と比較すると、学習研究の場が大きく減少し、アルバイトやボランティア活動中が大きく上昇しているが、オンライン授業の増加に伴い、学習研究の場における対面的接触が減少した影響が考えられる。また、飲酒による被害の減少も、コロナ禍による飲酒機会の減少の影響があるものと考えられる。

12)スマートフォンの使用について
 スマートフォンの使用時間(質問57)については、「1日に3時間以上使用している」とする割合が58.1%であり、前回調査と比較すると約14ポイントも増加している。スマートフォンへの依存が進んでいることが懸念されるところであるが、スマートフォンを利用したオンライン授業の受講増加もその原因として考えられる。

13)健康状態について
 現在の身体的健康状態が「非常に良好」または「良好」と回答した学生(質問59)は、66.6%であり、前回調査の68.9%から若干低下したものの大きな変化はなかった。今回の調査の注目点としては、住居形態別で見た場合に身体的健康状態が「非常に良好」または「良好」と答えた学生の割合が最も低かったのは「親戚・知人宅」の57.5%であったこと、経済状態と身体的健康状態には相関があると考えられること、講義への出席率90~100%の学生が身体的健康状態も最も良好であることなどである。一方、現在のメンタル面の健康状態が「非常に良好」または「良好」と回答した学生(質問60)は、55.4%であり、前回調査の64.5%からかなり低下しており、憂慮されるところである。住居形態別で見ると、身体的健康状態と同様に、「親戚・知人宅」で低くなっており(38.5%)、経済状態との相関も身体的健康状態と同様に見られる。講義への出席率では、出席率50~59%の層で、慢性的な不安・不調を抱えた学生の割合が5割強とかなり多くなっている。また、前回調査と比較して、飲酒頻度(質問61)は上昇する一方、喫煙者と喫煙量(質問62)は、ともに減少していることが明らかになった。

14)悩みについて
 現在の悩み(質問64)に関しては、「進路や就職」58.1%、「学業」39.6%、「生活費や学費など経済的問題」21.2%が主なものであり、前回調査と比較して「進路や就職」が増え、「学業」が減少した(前回は、「学業」が56.5%で最も多かった)。悩みへの対処法(質問65)に関しては、「友人・先輩に相談する」67.5%、「家族に相談する」52.2%、「誰にも相談しない」24.0%で、前回調査と比較して、「友人・先輩に相談する」が増え、「家族に相談する」が減少した(前回は、「家族に相談する」が67.5%で最も多かった)。学内のチューターや教職員、保健管理センター、ぴあROOMなど、大学での相談体制を利用すると回答した学生の割合は6.8%で、前回の6.5%とほぼ変わらなかった。学生にとって進路や学業の悩みは切実なものであるため、「誰にも相談しない」という学生を減らし、学内の相談体制を充実させることが課題となるが、この点で、2022年に新たに設置された学生相談総合窓口「キャンパスライフなんでも相談室」が学生に周知され、有効に機能することが期待される。

15)コロナの影響について
 上記の内容から明らかなように、従来からの質問項目においても、コロナによる影響が随所に伺えるが、今回の調査では、コロナによる学生生活(学業・経済状態)への影響に関する質問項目を新たに設けた(質問66~72)。
 オンライン授業については、良かった点として、「自分の選んだ場所で授業を受けられた」、「自分のペースで学修できた」が多く、悪かった点としては、「レポート等の課題が多かった」、「対面授業よりも理解しにくい」、「友人などと一緒に授業を受けられず、寂しい」が多かった。悪かった点として挙げられた理解のしにくさは、今後、このような学生の声が比較的多いことを踏まえて、一層の改善に努める必要がある。オンライン授業の満足度については、肯定的評価が68.5%(「満足」24.9%、「ある程度満足」43.6%)であったが、これは、文部科学省が2020年に行った全国調査より10ポイント以上高い数値となっている。コロナ禍の経済状況については、アルバイト探しに困難を抱えた学生・院生が1割強(13.3%)いたことが明らかになった。アルバイト収入については、ほとんど変わらなかったという学生が最も多かったものの(44%)、減少があった学生・院生も34.3%に及んでおり、そのうち約22%が5割以上の減少があったと回答しており、深刻な影響を受けた学生・院生も決して少なくない。収入減への対応としては、遊興費、食費、衣料費・日用品費の支出の切り詰めが多かった。遊興費や食費の切り詰めは、人間関係の形成や健康の維持・増進に影響を与える可能性があり、軽視できない。

16)キャリア相談室について
 本学では、学生の就職支援について、キャリア支援課(現・キャリア支援室)と各学部において、柔軟・迅速に対応できるよう体制を構築してきているところであるが、キャリア支援課(現・キャリア支援室)実施のガイダンスの参加経験(質問73)については、「ある」が全学で10.4%であり、前回調査と比較して、各学部・大学院で軒並み減少しており、特に経済学部は61.4%から25.3%に大きく減少した。相談室の利用経験(質問74)についても「ある」は8.6%にとどまっており、前回調査と比較すると、教育学部・経済学部・理工学部(工学部)などで減少している。ガイダンスについては「知らなかったので、参加したことがない」と回答した学生が全体で47.7%、相談室についても「知らなかったので、利用したことがない」と回答した学生が全体で43.9%おり、いずれも学部間でその差が大きい。双方とも学生に対する十分な周知が引き続き課題である。
 卒業後に就職を希望する地域(質問75)については、「大分県内」29.4%、「大分県以外の九州」22.2%であり、この2つで51.6%を占めているが、特に「大分県内」が前回調査の23.5%から約6ポイント増加している。

2022年11月

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