お知らせ令和5年度5月学長記者会見

令和5年度5月学長記者会見

日時
2023-0529
場所
県庁記者会見室
令和5年度5月学長記者会見

▲説明をする北野学長

【事項1】臼杵市・杵築市等との連携による脳梗塞予防のための心房細動検出研究

本邦の心房細動患者は100万人を超えており、その多くは脳梗塞(心原性脳梗塞)を引き起こします。心原性脳梗塞の予後は悪く、死亡、寝たきり、要介護の原因となります。心房細動の診断には、心房細動が出ているときの心電図を記録することが必須となりますが、心房細動であっても症状のない患者、あるいは、普段は正常な脈で、時々心房細動をきたす発作性心房細動患者は見逃されることが多いのが現状です。
そのような“隠れ心房細動”患者の早期発見には、長期間測定可能な心電図検査が有用であり、高い精度で診断することが可能になります。心房細動と診断できれば、脳梗塞予防のために抗凝固剤を投与し、またカテーテルアブレーションで根治させることも可能です。
本研究では、一般住民を対象に、脳梗塞リスクが高い日本人集団における未診断のすべて(発作性および持続性)の心房細動の有病率を評価します。

国立大学法人大分大学、大分県臼杵市、大分県杵築市、大分県後期高齢者医療広域連合、一般社団法人臼杵市医師会、杵築市立山香病院、JSR株式会社(JSR)、日本コンベンションサービス株式会社(JCS)の8機関により、アカデミア、行政、企業が一体となって行います。

大分県臼杵市、杵築市にて実施される、心房細動の早期発見による健康寿命延伸事業にて得られた1週間のホルター心電図(Heartnote)と基礎データを用います。
対象は、健診受診者で、1.年齢:75歳以上(2点)、65-74歳(1点)。2.既往歴:高血圧(1点)、脳卒中(1点)、心不全(1点)、糖尿病(1点)、心筋梗塞(1点)。3.受診時所見:収縮期血圧>140mmHgかつ/または拡張期血圧>90mmHg(1点)、空腹時血糖>126mg/dL1点)、体格指数>301点)、労作時呼吸困難や動悸の訴え(1点)とし、合計点が2点以上の場合。

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【事項2】AI活用による製造コストを抑えた新しい低分子医薬品の開発に関する本学申請が採択

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下AMED)が実施する令和5年度「創薬基盤推進研究事業」に本学医学部 松岡茂 特任教授を研究開発代表者として申請した課題「新医薬品創出に資する生体高分子局所構造の低分子模倣技術の開発」が採択されました。今回の募集では、AMEDによる書類審査・ヒアリング審査の厳正な審査が行われた結果、10件の応募から2件の課題が採択されています。
分子標的薬であるバイオ医薬品の発展は著しく、近年、医療用医薬品売上の上位10品目のうち半数を占めるまでに成長しました。しかしながら、高い製造コスト等が原因となり薬価を下げることが難しく、アクセス可能な患者や医療従事者が限られています。そのため、公平性や持続可能性を考慮して、製造コストを削減する技術の開発が求められています。
一方で、2000年以上前から自然界に存在する植物や微生物などに由来する物質が医療目的に利用されてきました。これらの多くは低分子化合物です。低分子医薬品は、多くの場合、合成化学による製造が可能なため生産コストが抑えられ、常温での長期保存や経口投与が可能な利点があります。一般的な薬物や抗生物質などの多くは低分子であり、長年信頼されている治療方法です。
本研究の目的は、バイオ医薬品の中心的なモダリティであるタンパク質やペプチド(短いタンパク質の鎖)の薬理機能を、低分子で再現するインシリコ創薬技術の開発と発展です。既存のバイオ医薬品や未利用のタンパク質・ペプチドから、医薬品として利用できる部分の三次元構造をコンピューター上で抽出し、低分子化合物として再設計することで、より効果的で安全性の高い低分子医薬品の開発を目指します。

元素の数と組み合わせは有限であるため、存在しうるすべての化合物の集合も有限の広がり(空間)を持つと考えられます。これを「化学空間(ケミカルスペース)」と呼びます(詳細補足資料2図参照)。低分子創薬では、この化学空間を効率的に探索し、迅速に新薬を見つけることが重要です。私たちが開発・実践している低分子模倣技術は、既存のタンパク質やペプチドの部分構造からまったく新しい化学構造の低分子を設計することで、未踏の低分子化学空間の効率的な探索を可能とします。これにより、新規な生理活性分子の発見の可能性が大幅に向上します。本プロジェクトでは、これまで開発してきた独自のインシリコ創薬技術にAIを組み合わせることで、分子設計のさらなる効率化を図ります。
過去3年間で見つかった有望な化合物の一部(ウイルス阻害化合物とSARS-CoV-2阻害化合物)は、シンガポールに拠点を置く創薬ベンチャー企業Albius Sciences(代表取締役社長ハインリヒ・グラブナー氏)に導出され、医薬品としての国際共同開発が進行中です。

本プロジェクトは、本学医学部を中心に行われます。本学の臨床薬理学講座(上村尚人教授)では、産学連携を通じた学際的なアカデミア創薬環境を築いてきました。この講座では、過去6年間にわたりAMED「創薬基盤推進研究事業」に継続的に採択され(平成29年度~令和1年度 代表・上村、令和2~4年度 代表・松岡)、その間に5つの特許を国内外の創薬ベンチャー企業へライセンスアウトしてきました。本課題でも有望化合物の知財化と導出を継続したいと考えています。

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【事項3】JST「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」において本学の企画が採択され、リケジョの育成を開始

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)は、未来に活躍する理系女性研究者、開発者を増やすために、主に高校生を対象にした「リケジョ事業」を競争的資金事業として展開してきました。
今回、本学で最も女子学生比率が低い理工学部が「女子中学生から女性開発者へのトランスフォーメーション-科学に「ときめく」女性の持続的育成システム開発」事業を申請し、2023~2024年度の事業(支援総額600万円)として採択されました。
本学では、男女共同参画推進室が、2015年度、2016-2017年度の過去2回、本事業に採択されたことを起点として「高校生と保護者」を対象に活動していますが、今回の採択を機に、大分県の都市部と過疎エリア双方の「女子中学生」のリケジョ育成活動にも着手します。

企画内容の特徴として次の点です。これらは、JST事業の審査員コメントでも「他に例を見ない取組」と評価されています。

1.グローバル企業、および、地域の女性活躍企業と協働して大分大学が、産学連携型のリケジョ育成企画を実施する点。例えば、地域の半導体製造で活躍している女性社会人との対話、地域の女性社長との対談なども含まれる。
2.高校生に加え、「女子中学生」と保護者、教諭の三者を対象とした事業展開を構想している点。
3.理系に誘う具体的な取組として、段階的にAIプログラミングなどの「デジタル育成」を産学連携で女子生徒に対して企画している点。
4.オンラインを活用した無料の大学院生相談(理系科目、勉強と進路選択の悩み)場を中学高校との間に設ける点。
5.中学校は、大分市など都市部に加えて、過疎エリアの中学校も対象とする点。

中高生と保護者に対する科学の出前講義、親子で体験する夏休み科学実験、「コンピューター入門、プログラミング、データ解析」の段階的なDX体験を産学連携で実施します。

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【事項4】令和6年度(2024年度)入試における理工学部・学校推薦型選抜「女子枠(仮称)」の新設

日本の理系人材においては女性比率が国際的水準に比べ低い現状であり、さらなる理系人材の増加には理系女性の増加が必須と考えます。大分大学では、2010年より男女共同参画推進本部を設置して女性研究者・女子学生を支援し、中学・高校等でのセミナーやイベントを通して、女子学生や生徒、保護者や教員等へダイバーシティの理解や、理系分野での女性の進路に関する啓蒙を継続的に推進してきました。大分大学理工学部では、令和6年度入試より、志願者の興味や志望を重視する学校推薦型選抜において女子枠を設定し、理工系の各分野において、大学院進学や企業での研究開発を強く志望する女子生徒を募集します。

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【事項5】医学部に29年ぶりの新学科誕生 “先進医療科学科” 開設記念シンポジウムの開催

2023年4月1日、本学医学部に29年ぶりの新学科となる先進医療科学科が誕生し、4月4日、大分大学入学式(J:COMホルトホール大分)で第1期生として35名の新入生を迎え入れました。これにより、医学部は医学科、看護学科、そして先進医療科学科の3学科体制となりました。
先進医療科学科の開設目的や教員の専門分野、授業の特色、卒業後の進路など、幅広く県民に知っていただくために、6月25日(日)に大分大学医学部 先進医療科学科 開設記念シンポジウムを開催する運びとなりました。
シンポジウムのテーマは、「未来に求められる先進医療科学とは?」であり、県内の医療機関、大学、行政、医師会、企業、さらには東九州メディカルバレー構想関係者など、今後、新学科と強い連携を取っていく方々を交えて、意見交換を予定しています。

先進医療科学科(学科長:穴井博文教授)は、生命健康科学コース(コース長:田仲和宏教授)および臨床医工学コース(コース長:兒玉雅明教授)に分かれており、医学・医療の基盤を支え、自然科学と社会科学の融合による「総合知」を創造し、イノベーション創出に発展させることのできる融合人材の育成を目指します。
医学部内に設置された利点を活かし、質の高い医学的な素養を身につけ、人工知能(AI)や情報工学、がんゲノム医療、プレシジョンメディシン、再生医療、人工臓器など生命医科学の先進領域と臨床検査・診断の先端的な専門知識と技能を修得します。また、医用機器学・人工臓器学などの医工学の先進領域に関する知識と最先端の生体機能代行装置の操作技術を修得します。
将来、卒業生は、大学院進学、研究職、医療機器メーカーや医療機関への専門技術者・指導者として多彩な進路が想定されており、各方面での活躍が大いに期待されています。

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【事項6】5月31日は世界禁煙デー タバコのない大学キャンパス実現に向けた大分大学の取組

5月31日はWHO(世界保健機関)が定める世界禁煙デー、5月31日~6月6日は厚生労働省が定めた禁煙週間です。
禁煙週間を迎えるにあたり、本学の無煙環境構築の最近の取組をお知らせします。

■クリアファイル及び幟(のぼり)の作成
本学学生を対象に公募を実施し(公募期間:R4.10.5~R4.12.23)、応募のあったデザイン8件、標語28件の中から採用作品各1点を決定し、クリアファイルとのぼりを作成しました。のぼりは構内各所に設置し、禁煙に関する啓発を行っています。クリアファイルは学生・教職員に配付します。この取組は平成27年から毎年継続して実施しています。

【大分大学の無煙環境構築のこれまでの取組】
平成19年 1月 挾間キャンパス全面禁煙実施
平成19年 8月 王子キャンパス全面禁煙実施
平成23年 4月 旦野原キャンパス全面禁煙実施(全キャンパスにおいて敷地内全面禁煙となる)
平成24年 4月 「大分大学禁煙推進宣言」制定・発信
平成25年10月 禁煙推進担当学長特別補佐 配置
平成26年 9月 保健管理センターにて無料で禁煙治療開始
平成27年 5月 クリアファイルの作成・配付及び幟の作成による禁煙啓発活動を開始(以後,毎年実施)
平成28年 5月 「国立大学法人大分大学職員の受動喫煙の防止等に関する規程」制定
       → 職員が勤務時間中または法人の敷地内においては,喫煙してはならないことを明記
平成31年 3月 「国立大学法人大分大学における教員選考の基本方針」制定
       → 非喫煙者を優先して選考することを規定
令和 3年 5月 「服務ハンドブック(第3版)」に喫煙後の呼気中の有害成分排出について,医学的に確認された旨と受動喫煙による健康被害防止の協力について記載し,教職員へ配付

このような取組の結果、平成25年度から令和4年度までの9年間で学生の喫煙率が旦野原キャンパスは7.0%から4.1%、挾間キャンパスは3.2%から1.3%と大きく改善されました。
加えて、一昨年から禁煙を推奨する看板を両キャンパスに設置し、喫煙習慣改善のための意識付けと禁煙治療の周知を行っています。

その他の情報

【事項1】医学部附属病院腎臓内科の福田顕弘助教が日本腎臓学会CSA(Clinical Scientist Award)を受賞

この度、医学部附属病院腎臓内科の福田顕弘助教が、日本腎臓学会の第7回令和5年度CSA(Clinical Scientist Award)を受賞しました。
CSA(Clinical Scientist Award)は、本邦の腎臓学におけるヒトを対象とした臨床研究のリーダーたりうる中堅研究者を顕彰することを目的に設けられました。第7回 令和5年度のCSA選考委員会は令和4年10月2日に行われ、褒章選考部会では、臨床研究について、手法の如何を問わず、結果として疾病、病態の診断、予後、治療等に直接的に結びつく研究と定義した上で、この定義に沿った研究成果とその継続性に着目して多岐にわたる熟議を行い、理事会に推薦し、令和4年11月27日承認されました。

研究主題 「慢性腎臓病の重症化予防を目指した尿中ポドサイトマーカーの臨床応用」
福田顕弘助教は、留学中に糸球体上皮細胞(podocyte)脱落が糸球体疾患を進行させるというpodocyte depletion仮説を遺伝子改変ラットを用いて証明し、帰国後も研究を継続し別のモデル動物を用いて同仮説の補強を行いました。この事象を基盤とし尿沈渣中のpodocyte由来mRNAが疾患活動性や治療反応性を示すバイオマーカーとして有用であるという仮説のもと、IgA腎症、抗GBM抗体型腎炎、ANCA関連糸球体腎炎の臨床症例で検証し報告しております。さらに尿沈渣中podocyte mRNAはpodocyte脱落を示唆する管外増殖性病変で、尿上清中podocyte蛋白量は、微絨毛様構造物の排出が多い疾患(膜性腎症)で高値を示し、尿沈渣と尿上清で異なる情報を得ることができることを報告し、現在大規模臨床研究に着手しています。
このように基礎研究で得られた現象を臨床で証明していくトランスレーショナル研究を実践し、今回の受賞となりました。

【第66回日本腎臓学会学術総会にて受賞講演予定】
開催日時:令和5年6月9日(金)14:00~14:15
開催場所:パシフィコ横浜 会議センター 1階 メインホール

【事項2】学生災害ボランティア講習会

学生・留学生支援課、減災・復興デザイン教育研究センター(CERD)主催

開催日時:令和5年5月31日(水)16:30~18:00
開催場所:旦野原キャンパス第1大講義室・挾間キャンパス臨床大講義室
対象:大分大学生・院生(学部不問)



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【事項3】2023シゴト発見フェスタ

本事業は、大分県内の大学1年生・2年生、3年生、短期大学1年生を対象に、企業説明会ではなく「シゴト説明会」を実施することを目的としています。これにより、学生が企業名や条件だけではなく、仕事内容や本人の適性の視点からも就職先を検討し、職業選択の視野を広げることができます。
また、仕事説明と就業体験を通じて、県内企業・自治体の認知度を上げ、地元で働く選択肢を検討できるようにすることも目的としています。これにより、学生の職業選択の幅を広げ、離職率の低下にもつなげることを目指しています。
本事業は、従来の企業説明会とは異なり、「シゴト説明会」というコンセプトで開催されます。学生たちが低学年から仕事について学ぶことを目的としており、仕事軸で就職先を探すことができます。また、このフェスタは、事前に学生が「職業適性検査」を受診し、自己分析を行った上で、シゴト説明会に参加します。これにより、より自分に合った職業を見つけることができる点が特色です。

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