大学概要令和5年 学長年頭の挨拶

令和5年 学長年頭の挨拶

皆さん、明けましておめでとうございます。
年末年始はゆっくりと休まれ、清々しい新たな気持ちで新年を迎えられたことと思います。
年頭にあたり、一言挨拶を申し上げます。

昨年の社会の出来事を振り返りますと、激動の1年だったと思います。安倍晋三元首相銃撃事件は社会に激震が走りました。また、ロシアによるウクライナ侵攻や歴史的な円安と物価の高騰などは社会に大きな影響を与えました。
一方で明るい出来事もありました。何と言っても、サッカーのワールドカップカタール大会では、日本チームは、1次リーグでは優勝経験のある強豪のドイツとスペインを破り、グループ首位で2大会連続となる決勝トーナメント進出を果たしました。残念ながら、ベスト8入りはかないませんでしたが、特にスペイン戦で三苫選手が見せた決勝アシスト、いわゆる「三苫の1ミリ」は、最後まで決して諦めない三苫選手の勇姿が日本国民を感動の渦に巻き込みました。

さて、本学の昨年1年間を振り返りますと、まず、1月には、「大分大学ビジョン2040~次世代につなぐ、そして未来を創る~」を策定し、2040年を見据えた本学が今後進んでいく道筋を、教育、研究、医療・福祉、地域貢献の分野ごとにビジョンとして示し、教職員で意識の共有を図ったところです。
そして、4月から、第4期中期目標・中期計画期間がスタートし、本学も「大分大学ビジョン2040」の下で新たな目標・計画の達成に向けてスタートをきりました。

また、4月1日には、「クライシスマネジメント機構」を設置しました。このことにより、感染症の流行(パンデミック)や自然災害など平時ではない想定を超えたクライシス(危機)が多発する状況の中で、多様化するリスク、マルチハザードへの対応を強化・高度化し、安全・安心かつ持続可能な地域形成社会に寄与していきます。

6月25日には、「経済学部創立100周年記念事業」を、また、10月18日には「理工学部創立50周年記念事業」を実施しました。この機会を起点として、また、次の時代へ向けて新たな歴史をしっかりと刻んでいきたいと思います。

一方で、相変わらずのコロナ禍において、社会的にウィズコロナの風潮が高まる中、本学では、授業を原則対面とし、学園祭も制限付きではありますが、3年ぶりに開催するなど、コロナ禍前の状態へ戻していく動きを活発化させました。
今後も、コロナ禍における学生教育や学生生活について、より充実したものになるように全力でサポートしていきたいと思います。
コロナ禍において、教育・研究や業務などに様々な負担を強いられている教職員の皆さんに対して、改めて感謝の意を表します。

次に研究面においては、理工学部教員と宇宙航空開発機構(JAXA)との人工衛星に関連する共同研究が注目を集め、また、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する橋渡し研究プログラムに医学部教員が研究代表者として申請した研究が複数採択されるなど、大きな研究成果を挙げています。
7月には、有名企業であるアデランスとの共同研究を発展させる目的で医学部に新たな寄附講座を設置するなど、研究体制の充実も図っています。

教育面では、過去7年間の正規教員就職率の平均が全国第1位となったほか、医師、看護師、理学療法士、精神保健福祉士及び社会福祉士の国家試験の合格率に関しても好成績を収めています。
また、本学の学生団体が生産や物流に関わる技術力を競う「キャチロボコンテスト」で優勝し、医学部学生の筆頭著者の論文が国際雑誌に掲載されたほか、複数の大学院生が学会賞等を受賞するなど、高い教育効果を挙げています。

令和5年も、様々なことに取り組んでいきます。
4月には医学部に「先進医療科学科」を設置し、医学と理工学、生命科学、医療マネジメントの領域を超えた幅広い知識や技術及び研究力を兼ね備え、病院・医療産業で活躍する融合人材の育成を開始します。
また、「理工学部」を2学科8コースから1学科9プログラムに改組し、「理学」と「工学」の両学問体系のより強い連携・協働のもとでの教育・研究を開始します。
令和5年度には、「STEAM教育推進センター」を設置し、学内・県内のSTEAM教育の強化や理工系分野の女性活躍の推進(入試改革や修学支援等)により、社会変革を創生する人材養成に取り組みます。本件は、文科省の令和5年度概算要求事項の中で、教育研究組織の改革に対する支援の代表的なものの一つとして、文科省の資料等で取り上げられています。

それから、「経済学部」の令和6年度改組に向けて、設置審への申請などを行います。
令和6年4月から制度が開始される予定の子どもに関する様々な問題に対応する新たな専門資格である「子ども家庭福祉ソーシャルワーカー(仮称)」の資格取得のための準備も福祉健康科学部で進めていく予定です。
また、「デジタル人材育成」に関しても、理工学部を主として検討を進めていきたいと思っています。

そのほか、施設整備では、挾間キャンパスの駐車場整備事業をはじめ、グローカル感染症研究センターの研究棟の建設など、学内のインフラ整備にも取り組んできます。

今般の新型コロナウィルスの世界的な感染拡大による影響等も含め、社会変革が不可逆的に進行していく中で、国立大学には、社会の様々なステークホルダーとの相互関与、連携等により新しい価値を共創する経営体へと転換していくことが求められています。我が国、そして各地域における中核として、従来に担ってきた役割に留まらず、新たな社会において自らが果たすべき役割を改めて認識し、その役割を果たすために必要な機能を拡張していく新たな段階を迎えています。

アルベルト・アインシュタインの名言と云われる中に「同じことを繰り返しながら、違う結果を望むなんて、狂っている。」という言葉があります。
社会情勢や社会構造などが目まぐるしく変化する中で、本学に求められるもの、本学の果たすべき役割も常に変化していきます。同じことだけを繰り返していては、それらに対応できません。もちろん、大学運営業務の中にはルーチン的なものも多くあり、それは淡々とやらなければなりませんが、大学全体としては、常に変化・進化していく必要があります。
私が学長に就任して以来、「改革なければ明日はない。」を信念に大学運営を行ってきました。これからも常に社会のニーズ等を見据えた改革を行っていくことこそが、地域に誇れる未来の大分大学を創ることになると確信しています。
今後、少子高齢化が進み、18歳人口が減少する中で、大胆な他大学との連携強化も必要だと考えています。

教職員の皆さんと一丸となって、地域にとってかけがえのない大学へと更に進化した未来の大分大学のために邁進していきたいと思います。

この一年が、本学にとって、また、教職員の皆さんにとって輝ける躍進の一年となることを願って、私からの新年の挨拶といたします。



 令和5年1月5日

国立大学法人大分大学長 北野 正剛