大学概要令和6年 学長年頭の挨拶

令和6年 学長年頭の挨拶

皆さん、明けましておめでとうございます。
年末年始はゆっくりと休養され、清々しい新たな気持ちで新年を迎えられたことと思います。
年頭にあたり、一言挨拶を申し上げます。

まずは、今年の元日に最大震度7を観測した「令和6年能登半島地震」が発生しました。改めて自然災害の恐ろしさを目の当たりにしました。本学の教職員や学生が帰省中等でこの地震の被害に遭ったという情報は、今のところありませんが、被災地では、多くの死者、負傷者、行方不明者が出ており、また、家屋等の倒壊も多数発生しています。被災された方々に心からお見舞い申し上げます。

さて、昨年の社会の出来事を振り返りますと、いろいろなことがありました。
野球の「ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)で、日本が14年ぶり3度目の優勝を果たし、日本中が感動の渦につつまれました。本大会で二刀流の活躍をしたエンジェルスの大谷翔平選手はドジャースへの移籍を発表し、アメリカンドリームを駆け抜ける姿が日本中の注目を集めました。
「チャットGPT」などの生成AI(人工知能)が日本でも急速に普及し、大学における教育、研究等を取り巻く環境も変化しつつある状況となっています。
また、アルツハイマー病の初の治療薬である「レカネマブ」の製造販売が開始されました。
新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられました。このことにより、本学も授業、課外活動、飲食等の行動制限を解除し、コロナ禍前のような活気に満ち溢れたキャンパスが戻ってきました。

本学の昨年1年間を振り返りますと、まず、教育研究組織に関しては、4月に、医学部において29年ぶりの新学科となる「先進医療科学科」を設置し、領域を超えた幅広い知識や技術及び研究力を持ち、医学・医療に精通した研究者や病院・医療産業界で活躍する人材の育成を開始しました。初回の志願者は予想を超えるものであり、まさに社会のニーズをとらえた学科新設であったと思っています。
また、理工学部においては、1学科(理工学科)9プログラムへ改組しました。理工学専門分野(プログラム)間の柔軟な連携により、理工融合教育を促進し、急速な技術革新に対応できるイノベーティブな技術開発人材の育成を目指していきます。
教育学部においては、大分県の深刻な教員不足への対応として、多くの優秀な教員を輩出すべく入学定員増を行いました。
さらに全学組織として、教育マネジメント機構に「STEAM教育推進センター」を設置しました。学内・県内のSTEAM教育の強化や理工系分野の女性活躍の推進により、社会変革を創生する人材養成に取り組んでいきます。

その他の教育面に関して、2021年度に一般社団法人日本医学教育評価機構(JACME)による医学教育分野別評価を受審した結果、2023年1月17日付けで世界医学教育連盟(WFME)の定める「医学教育の国際基準」に適合していることが認定されました。
本評価では、特に、保健・介護・福祉、住民の生活を含めた実習の実施及びサージカルラボセンター(SOLINE)でのトレーニング等を通して最前線の医療技術を体験する機会を提供していること等が評価されています。これからも更なる医学教育の充実を図っていきたいと思います。
教育学部の令和5年3月卒業生の教員就職率及び正規教員就職率は、どちらも全国第1位となり、4年連続第1位を達成しました。なお、平成28年から令和5年3月卒業生までの8年間の平均に関しても両方ともに全国第1位となっています。また、「看護師、理学療法士、社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師」の全ての国家試験において、合格率100%を達成しました。精神保健福祉士は、10年連続で合格率100%を達成しており、高い教育の成果として表れています。

次に研究面です。
医学部においては、花王株式会社スキンケア研究所との共同研究の成果として、アトピー性皮膚炎の患者の皮膚、角層内に存在するセラミドの性状がアトピー性皮膚炎の寛解や症状の悪化を予測するための指標になる可能性があることを発見しました。将来の臨床応用が期待されます。
また、一般社団法人臼杵市医師会、株式会社島津製作所、エーザイ株式会社と、血液バイオマーカーを活用したアルツハイマー病の診断治療ワークフローの有用性を検証するための共同研究を開始しました。
理工学部においては、船舶用エンジン製造のダイハツディーゼル株式会社と、より効果的なアンモニア・水素混焼機関の実現を目指した開発に関する共同研究を開始しました。

医療面に関して、4月に肥満症・糖尿病の最先端の診断法と研究、治療を進めることを目的として、医学部附属病院に「肥満・糖尿病先進治療センター」を開設しました。当センターの開設により、内科と外科の専門医に加え、管理栄養士、看護師や理学療法士などのメディカルスタッフが協同して治療にあたり、行動療法、薬物療法や外科療法など様々な治療方法で、個々の患者にとって、よりベストな治療を進めることが可能となります。
医学部と臼杵市、杵築市、大分県後期高齢者医療広域連合、一般社団法人臼杵市医師会、杵築市立山香病院、JSR株式会社、日本コンベンションサービス株式会社の8機関の連携により、脳梗塞のリスクを高める心房細動の潜在患者を早期に発見し、脳梗塞を予防する取組を開始しました。これは、自治体の健診で心房細動の潜在患者を早期発見する全国初の取組であり、健康寿命の延伸や将来の医療・介護費の削減に寄与できると考えています。

令和6年も、様々なことに取り組んでいきます。

昨年の7月に、文部科学省が実施する「令和5年度大学・高専機能強化支援事業(高度情報専門人材の確保に向けた機能強化に係る支援)」において、「大分大学におけるVUCA時代の社会を維持・発展させるためのDX人材育成プログラム」が採択されました。
本事業の採択により、令和6年4月から理工学部に入学定員40名の「DX人材育成基盤プログラム」を新設し、学生の受入れを開始します。また、大学院工学研究科は令和7年4月に大学院理工学研究科へ改組することで手続きを進め、その中に入学定員10名の「情報・数理データサイエンスプログラム(高度実践系)」を新設し、デジタル社会におけるリーダーとして、新しい付加価値の創造を主導できるDX人材の育成を目指します。
また、4月には、経済社会のサスティナビリティに対応するため、経済学部を4学科から1学科6コースへ改組します。このことにより、社会科学諸分野を横断する包括的・総合的な教育を展開します。
それから、福祉健康科学部においては、令和6年度から制度化される予定の「こども家庭ソーシャルワーカー」の資格取得を見据えた準備も引き続き進めていきます。
さらに、全学的な大学院の見直しを行います。昨年の11月に「機能の再構築・強化に係る検討会」の下に「大学院の在り方検討ワーキンググループ」を設置し、大学院における諸課題への対応や、大分大学ビジョン2040の実現にもつながる今後の大学院の在り方について検討を開始しており、令和6年9月中を目処に、方針を取りまとめる予定としています。
そのほか、施設整備では、挾間キャンパスにおける正門進入路の変更、完全4車線化及び患者用駐車場の増設に向けた工事が3月に完成する予定です。このことにより、外来患者等の交通渋滞を解消し、附属病院の利便性向上を図ります。
また、グローカル感染症研究センターの4階建ての研究棟新設工事が2月に完成する予定です。本学のイノベーション・コモンズ化に向けた先導的な施設となることを期待しています。
私は、2011年10月に初めて学長に就任して以来、現在、13年目を迎えました。その間、「ミッションの再定義」、「大学改革実行プラン」、「国立大学改革プラン」などが次々と文科省から示され、まさに国立大学法人にとっては、国立大学法人としての価値や存在意義をアピールできなければ、未来がないという危機感を常に感じていた激動・変革の時期だったと思います。
私は、学長として、苦しみながらも改革を続け、教職員の皆さん方と共に現在の大分大学を築いてきたと思っています。
今後も、少子化の進行による志願者の減少や国の財政状況などを理由とする運営費交付金の削減など、国立大学法人をめぐる状況は益々厳しくなっていくことは必然です。
近年、大学の運営基盤を強化するため国立大学法人の連携・統合が進んでおり、国立大学法人にとっては、これからの4年間が、その存立に関わり、将来を決定づける、極めて重要な時期に直面することになります。
さらに、本学は、大分における「地(知)の拠点」である高等教育機関、唯一の国立大学として、21世紀、令和の時代、少子高齢社会の時代の旗手として積極的に地域経済社会を、そして国をリードしていくべき崇高な使命を担っていると考えています。
私は、将来にわたって、真に存在感のある地方国立大学として、国立大学法人大分大学の存続、更なる発展に向け、今後とも、「改革なき大学に明日はない」の信念のもと、一念通天の思いで不断の改革を行っていきます。
そのために、適正な管理運営を確保し、教育、研究、医療・福祉、地域貢献・社会連携、国際化・国際交流など大学運営の全般にわたり、適宜、適切に、的確なリーダーシップを発揮し、必要な施策を積極的に展開していきます。
そして、さらに「若者から求められる大学」を目指し、役員、教職員と一体となって、次代へ向けて邁進していきます。

この一年が、大分大学にとって、また、教職員の皆さんにとって辰のごとく昇っていく一年となることを願って、私からの新年の挨拶といたします。


 令和6年1月5日


国立大学法人大分大学長
北 野 正 剛