大学概要令和7年 学長年頭の挨拶

令和7年 学長年頭の挨拶

皆さん、明けましておめでとうございます。
年末年始はゆっくりと過ごされ、健やかに新年を迎えられたことと思います。
令和7年(2025年)の年頭にあたり、一言挨拶を申し上げます。

昨年の社会の出来事を振り返りますと、様々なことがありました。
まずは、元日に最大震度7を観測した「令和6年能登半島地震」が発生し、多くの死者を出す大惨事となりました。また、8月には宮崎県沖で、マグニチュード7.1の地震が発生し、改めて、いつどこで発生するかわからない自然災害の恐ろしさを目の当たりにしました。我々は、日頃から、それらの自然災害に備えておく必要があります。本学では、多くの学生、教職員が在籍しているほか、附属病院もあり、学生・教職員を守る、患者さんを守る、という役割と責務を担っています。また、「災害対策マニュアル」では、避難住民の受入れも想定しています。本学の3つのキャンパスでは、それぞれ防災訓練や防火訓練を定期的に実施していますが、訓練実施、評価・検証、改善のサイクルで、より効果的なものにしていく必要があると思っています。何よりも、本学には減災・復興デザイン教育研究センター(CERD)があり、最先端の教育・研究を通して、大分県や地方自治体、企業との連携の下、災害対応の高度化に努めています。
それから、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月探査機「SLIM」(スリム)が、日本の無人探査機として初めて月面着陸に成功しました。そのほかにも、日本の新たな大型主力ロケット「H3」の2号機が打ち上げに成功し、日本の技術力の高さを世界にアピールしました。
一方で、国内初の民間ロケットの打ち上げが失敗したニュースがありましたが、打ち上げを行った会社関係者は「失敗という言葉は使わない。ひとつひとつの試みの中に新しいデータや経験があり、それが全て今後の新しい挑戦へ向けての糧だと考えている。諦めるつもりは全くない。可能な限り早く次の打ち上げに向けて対応したい。」とのコメントをしていました。まだ、成功には至っていませんが、コメントにあるように、失敗しても決して諦めることなく、また次に向かって全力で努力していく、ロケットに限らず、何事にも言えることです。その先にこそ、新たなものが生まれてくると思います。
宇宙関係においては、本学の理工学部ではJAXAや静岡大学と連携し、身近な植物「竹」を基にして製造したセルロースナノファイバーを材料としたプラスチック材料が「アウトガス」を放出しないことを世界で初めて実証しました。この研究成果は、「Acta Astronautica(アクトアストロノーティカ)」に掲載されました。本学が開発した「アウトガス」が発生しない素材が更なる宇宙研究に大きな貢献をしてくれることが期待されています。
また、第33回夏季五輪パリ大会が開催され、日本は金メダル20個、銀メダル12個、銅メダル13個を獲得し、金メダル、総数ともに海外の夏季五輪では過去最多となりました。私の愛するフェンシングの話題になりますが、フェンシング日本代表は、競技の本場であるフランスで行われた大会で、金メダル2つを含む5つのメダルを獲得する大躍進を遂げ、世界を驚かせました。大分県出身の敷根崇裕選手が団体で金メダルを獲得したほか、江村美咲選手、上野優佳選手も団体で銅メダルを獲得するなど大活躍しました。
このことは、彼ら、彼女らの類まれな才能はもちろんですが、それ以上に、血のにじむような努力を積み重ねてきたことが結実したものであり、多くの人々を感動に導きました。決して諦めることなく、一念に向かって努力を惜しまず挑戦し続けた結果、今回の大きな成果へ繋がったと思います。そのことこそが成長、進化を生み出す原点だと思います。
次に、日本銀行が、20年ぶりとなる新紙幣の発行を始めました。これらの紙幣は、偽造を防ぐため、傾けると肖像が立体的に動いて見える「3Dホログラム」が世界で初めて採用されたとのことです。「3Dホログラム」は、1947年にイギリス人の物理学者(ガーボル・デーネシュ)によって発明されてから、現在に至るまで70年以上もの間、研究が続けられているとのことです。これも研究者のたゆまぬ努力の継続によって、今後さらなる進歩が期待できるのではないかと思っています。

さて、本学の昨年1年間を振り返りますと、令和6年4月から理工学部に入学定員40名の「DX人材育成基盤プログラム」を新設し、現在、39名の学生が勉学に励んでいます。本プログラムは大学院と連動し、デジタル社会におけるリーダーとして、潜在的課題の発見・解決、また、非常事態におけるデジタルインフラの速やかな回復・復興、さらには新しい付加価値の創造を主導できるDX人材を養成します。このことは、理工学部に留まらず、他の学部の教育プログラムも含め、大分大学全体で、現代の社会が必要としているDX人材を養成することにより、DX社会への貢献を果たしていきたいと考えています。教職員においては、是非、そのような意識を強く持ってほしいと思います。
また、経済学部では、経済社会のサスティナビリティに対応するため、令和6年4月に、4学科から1学科6コースへ改組し、社会科学諸分野を横断する包括的・総合的な教育を開始しました。
それから、福祉健康科学部においては、新たなこども家庭福祉分野の専門資格である「こども家庭ソーシャルワーカー」の養成を開始しました。
これらは、まさしく時代を捉えた改革だと思っています。改革は、膨大な労力と時間を要します。今まで、教育研究組織の改編など様々な改革に尽力された教職員の皆さんに対して、改めて感謝と敬意を表します。一方で、少子高齢化など社会情勢が急激に変化している中、立ち止まることは「後退」を意味します。これからも常に俯瞰的な視点で、本学として何を守り、何を変えていくのかということを強く意識しながら、不断の改革を進めていきたいと考えています。
令和6年7月、各大学等の即時オープンアクセスに向けた体制整備・システム改革を加速させることを目的とした文部科学省「オープンアクセス加速化事業」の採択を受け、オープンアクセスの推進体制整備に着手しました。研究成果の管理体制強化のため、同年7月、研究データ管理・公開ポリシーを策定するとともに、researchmapへの登録を推進するなど、研究力の可視化に向けた環境整備を開始しました。現在、教員の皆さんには、システムへの研究実績の登録を依頼しています。「研究データの組織的管理」「研究成果の発信力強化」「研究成果の可視化による研究力分析体制強化」の視点で、基盤的環境や運営体制の整備を行い、研究成果を広く社会に還元できる体制を構築していく所存です。
さらに、一昨年、「機能の再構築・強化に係る検討会」の下に設置した「大学院の在り方検討ワーキンググループ」で検討している大学院における諸課題への対応や、大分大学ビジョン2040の実現にもつながる今後の大学院の在り方を踏まえ、これから、教職員の皆さんと一緒に、全学的に大学院改革に取り組んでいきたいと思っています。
そのほか、施設整備では、令和5年12月に挾間キャンパスにおける正門進入路を変更し、令和6年2月に完全4車線化及び患者用駐車場の増設を行い、外来患者さんらの交通渋滞を解消し、附属病院への利便性の向上を図りました。
 また、令和6年2月には、グローカル感染症研究センターの研究棟を新設し、同年3月に、落成記念式典を開催しました。同センターは、共同利用・共同研究拠点新規認定を目指して、現在、国内外の大学・研究機関と共同研究実績を増やしているところです。本学のイノベーション・コモンズ化に向けた先導的な施設として、本学の研究全体の活性化、研究力の強化に寄与することを期待しています。

令和7年も様々なことに取り組んでいきます。
令和7年4月に大学院工学研究科を理工学研究科へ改組します。その中に入学定員10名の「情報・数理データサイエンスプログラム(高度実践系)」を新設し、理工学部の「DX人材育成基盤プログラム」と連動することにより、デジタル社会におけるリーダーとして、新しい付加価値の創造を主導できるDX人材の育成を目指します。
それから、令和6年3月、本学が「おおいた地域連携プラットフォーム」の代表として申請した文部科学省公募事業「令和5年度地域ニーズに応える産学官連携を通じたリカレント教育プラットフォーム構築支援事業」について、2回目の採択がなされました。このことを踏まえ、今後も地域のニーズに対応したリカレント教育を推進し、地域経済の活性化に寄与していきたいと思います。
施設設備では、昨年、DX関係の概算要求が認められ、今年、旧食堂跡地にイノベーション・コモンズの機能を持つ建物が完成予定です。これは、様々な人々が集うことによって、DXに限らず、GXなども含めた多種多様な課題に取り組む「共創拠点」エリアとしてのシンボル的な建物になることを期待しています。

本学では、令和4年(2022年)1月に、中長期的な大学の方向性を打ち出した「大分大学ビジョン2040 ~次世代につなぐ、そして未来を創る~」をもとに、現在、教育、研究、医療・福祉、地域貢献の各分野において、様々な不断の改革を行っています。そのような中、本学を取り巻く環境は年々厳しさを増しており、特に運営費交付金の逓減(ていげん)に伴う財政状況は大変厳しいものとなっていますが、教職員の皆さんの協力を得ながら、様々な施策を講じて、教職員の皆さんが喜びや、やりがいをもって働けるように、労働環境や処遇改善も含め、可能な限り、本学の経営基盤の強化を図っていかなければならないと考えています。
また、本学の様々な取組みについて、地域の方々を含め、広く社会に伝えることで、本学が生み出した社会的価値をアピールし、本学への理解を深め、さらに本学への支援につなげることを目指し、本学として初めて「統合報告書」を作成しました。「大分大学ビジョン2040」のキャッチコピーは「次世代につなぐ、そして未来を創る」です。
先ほども述べましたが、これからも、時代や社会の様々な状況下において、私は、大分大学長として、「改革なき大学に明日はない」の信念の下、今、本学は何をすべきか、どうすることが最善かということを真剣に考え、役員はもとより、教職員の皆さんに理解と協力を求めながら、一丸となって種々の改革等に取り組み、「知(地)の拠点」として地域社会と共に発展し、地域に支えられる大学として使命を果たし続けることにより、次世代につながる未来を創造していきたいと思っています。
教職員の皆さんにおかれては、引き続き理解と協力をお願いします。
今年の干支は、乙巳(きのとみ)です。60年周期の干支の中で42番目に位置し、「努力を重ね、物事を安定させていく」という意味合いを持つ年とされています。皆さん、大分大学のために一緒に努力していきましょう。努力の継続は必ず実りをもたらすと信じています。
令和7年(2025年)が、大分大学にとって、また、教職員の皆さんにとって素晴らしい一年となることを願って、私からの新年の挨拶といたします。



令和7年1月7日

 

国立大学法人大分大学長
北 野 正 剛