大学概要平成18年度 卒業式・学位記授与式告辞

学長メッセージ

平成18年度 卒業式・学位記授与式告辞

春爛漫の本日,ここに1,078名の学部卒業者ならびに267名の大学院修了者を社会へ送り出すにあたり,一言ご挨拶申し上げます。

まず,卒業者ならびに修了者の皆さんへ,入学以来のたゆまぬ努力のおかげでこの素晴らしい門出の日を迎えられたことに対しまして,心よりお祝いの言葉を贈ります。また本日ご列席の,保護者ならびにご関係の皆様方にも,お祝いを申し上げます。卒業者・修了者の皆さんには,学生生活を経済的に支えてくださいました保護者の方にはもちろん,本学の教員や職員,そして友人や先輩など多くの方に支えられて今日を迎えたということを,忘れないでいただきたいと思います。

本日は,34名の留学生の皆さんも,卒業・修了されました。留学生の皆さんは祖国を離れ,言葉や習慣などが大きく異なる,ここ大分の地で勉学に努められ,所期の目的を達せられました。その努力に対して敬意を表しますとともに,祖国へ戻られてからも,自然豊かな大分の地,そして日本のことを忘れずにご活躍いただきたいと思います。

皆さんが在学中の平成15年10月,旧大分医科大学と旧大分大学は統合し,新しい大分大学がスタートしました。今日は,統合後4回目の卒業式であります。本学は,統合2大学の前身も含めて,これまでに,5万9千名余の卒業生を社会に送り出してきました。今日卒業ならびに修了された1,345名の皆さんが,新しくこの数字に加わることとなります。有為の人材を社会に供給することは,大学の基本的責務であります。本学はこれからも教育改革に努め,皆さんの後輩を送り続けると共に,社会で活躍する卒業生諸君との連携を,強めて参ります。皆さんはインターネットを使って,本学や出身学部,ならびにゼミのホームページを開き,母校の現状を知ることができます。皆さんが学んだ母校を,単に懐かしさだけでなく,皆さんのお仕事の上でも大いに活用していただきたいのです。また,各学部等にあります同窓会は,卒業・修了された皆さんと母校との連携を強める多様な活動を展開していますので,ぜひご参加いただきたいと思います。

本日は,新しく制定された学歌を,皆さんと一緒に聴く最初の機会でもありました。両大学の統合後に新しい学歌をと言う声は,以前からありました。そこで作詞ならびに作曲の公募を行うなど,約1年間を掛けて準備を進め,このたび制定されたものです。先ほど皆さんお聞きになったように,荘重さと歌いやすさを備えた,たいへん素晴らしい学歌です。皆さんに愛唱いただき,大学と皆さんを結ぶ絆を強める上で貢献することを,心より願っております。

さて,卒業・修了された皆さんは,これから企業等で,あるいは医療の現場などで活躍されることと思います。また,大学院へ進学し,さらに勉学を続ける方もおられるでしょう。ところで,皆さんが活躍されるこの21世紀の世界は,一体どのような社会でしょう。現状がどうであるかと言うことよりも,恐らく皆さんが社会の中心となって活躍されるであろう20年後の状況はどうなっているのか,考えておくことが必要です。世界の人口は現在64億人と言われていますが,これが80億人になると予想されており,その60%はアジアに住みます。しかも,都市部に集中するでしょう。人口増加と過密化は,必然的に食料やエネルギー問題,地球環境問題,ならびに都市環境問題を引き起こす恐れがあります。一方我が国はと言いますと,少子化と高齢化が進む中で,人口の約30%を65歳以上が占めると推測されています。当然年金の問題も深刻化するでしょう。中国やインドの最近のめざましい経済発展に象徴されるように,我が国を取り巻くアジアの国々はそのとき,伸びにバラツキはあっても,成長を続けていることでしょう。この様な状況にあって,我が国はどの様な国家を目指すのか,当然日本だけで生きていくことは出来ないわけですから,今のうちから,世界の動きをよく解析しながら考えておかねばなりません。

この様に世界との関わりが今以上に重要となるこれから,皆さんのお仕事の中にも,必ずやグローバル化という視点が求められることと思います。世界各地で情報化が激しいスピードで進む中,情報の受信や発信が多くの人々に平等に可能となり,いわば情報の共有が世界規模で起こるようになってきます。その様なルートを経て得られる世界の動きをキャッチし解析し行動することが,世界に理解され評価される日本を築く上で,不可欠ではないかと考えます。一方で,パソコンのキーを一押しすれば,個人の意見を瞬時にして世界中へ伝達することも可能です。これを「ワン・クリック・グローバリゼーション」と呼ぶそうですが,今後情報技術のさらなる革新により,従来考えもしなかったような変化が起こりうる時代となっています。ビジネスや科学技術の世界は言うに及ばず,教育や医療の分野においても然りです。先日開かれました本学主催の癌医療に関する講演会において,最先端のCTスキャン装置と情報処理技術を使うことにより,例えば食道から胃へと消化管内を内視鏡であたかも検査しているかのような映像をディスプレイ上に描き出すことも可能になり,検査の迅速化と病気の発見に活用できるというお話を伺い,非常に驚いたところです。先ほどは,我が国の20年後について,やや懸念される材料ばかり申し上げましたが,我が国が得意とする多くの分野,例えば環境やエネルギーと言った分野で,世界が我が国に期待するところは,非常に大きいと思います。我が国は,その様な面で,世界発展への貢献をすべきだと思います。昨年行われた,英国BBCなどによる世界33カ国調査で,日本は「世界に良い影響を与えている国・地域」で2位になったそうです。ちなみに,1位は欧州でした。一方国家としては,我が国が堂々の1位でして,国際社会の高い評価を得たことに,私たちはもっと自信を持って良いのではないかと思います。

ところで,本日卒業・修了される多くの方が,企業や自治体をはじめ大小様々な組織で勤務されることと思います。皆さんが力を発揮してそれらの組織で活躍し,重要な役割を果たしながら成長されることを,強く望んでいます。それと共に,可能性があれば,ベンチャーマインドの精神に基づいて組織を離れ新たな業を起こす,いわゆる起業家を目指すことも大切です。もちろんリスクが伴いますが,それを恐れず,情熱を持ってチャレンジする心を持っていただきたいと思います。我が国では,とかく同質の社会を作る傾向があると言われますが,組織内において異なる発想をすること,そしてその発想を受け入れ多様性を認めることが,今後の我が国の発展にとって必要ではないかと考えます。昨今盛んに唱えられているイノベーションも,その様な発想や取り組みの中から,生まれてくるのではないでしょうか。若い皆さんには,常に問題意識を高め,周囲と異なることを恐れず,大いに飛翔していただきたいと思います。

皆さん,いよいよ門出の時が参りました。若くて活力に溢れた皆さんの前途は,大きな可能性に満ちています。しかし一方で社会は絶えず変化しており,従来見られなかったような複雑さや不安定さが,今後増していくのではないかと考えられます。揺れ動く社会において,おびただしい量の情報に取り囲まれる中で的確な判断を行うには,常に学び自らを磨く姿勢が不可欠です。人生は生涯学びであることを,肝に銘じていただきたいと思います。

皆さんはここ大分の地で学ばれ,これから羽ばたこうとされています。皆さんが活躍される場所は,大分から九州へ,九州から全国へ,そして日本から世界へと,留まることなく広がることでしょう。世界中で,積極性あふれるチャレンジ精神をもって大いに活躍していただき,母校の名を高めて下さい。そのために最も大切なのは,健康です。4月からは新しい環境の下で生活されますので,くれぐれも健康には,ご留意ください。

皆さんの,これからのいっそうのご健勝とご活躍を祈念いたしまして,私の告辞といたします。




平成18年3月23日

大分大学学長 羽野 忠