お知らせ令和7年度7月学長記者会見
令和7年度7月学長記者会見
- 日時
- 2025-0724
- 場所
- 県庁記者会見室

▲説明をする北野学長
【事項1】国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) の
「水素利用拡大に向けた共通基盤強化のための研究開発事業」 に採択
本学理工学部・応用化学系クラスターの衣本研究室では、脱炭素、2050年でのカーボンニュートラルの実現のキーデバイスである燃料電池の材料に関する研究を進めています。
この度、NEDOが公募した「水素利用拡大に向けた共通基盤強化のための研究開発事業」の「研究開発項目Ⅱ次世代燃料電池・水電解の要素技術開発」にパナソニック株式会社と共同で応募した結果、採択されました。
■研究事業名:アミジン修飾を基盤とする活性最大化技術と界面修飾MEA技術の開発
■研究代表者:理工学部 衣本太郎 教授
■共同実施機関:パナソニック株式会社
(1) NEDOの公募情報および採択結果は下記をご参照ください。
▶ 公募情報(NEDO)
▶ 採択結果(NEDO)
(2) 燃料電池の中でも燃料電池自動車(FCV)や家庭用燃料電池(エネファーム)に実装されている“固体高分子形燃料電池(PEFC)”の研究に取り組みます。PEFCは、水素を燃料に、空気(酸素)を使って化学的に電力を発生させます。
(3) 燃料電池は、我が国が技術的強みを有する分野とされており、水素産業の競争力強化に向けた重要分野の1つに位置付けられています。この事業では、トラック等のヘビーデューティービークル(HDV)向けが開発ターゲットの一つで、HDV向けのPEFCにも性能と耐久性の向上が求められており、部素材をはじめ多くの研究開発要素が残されています。
▶ NEDO燃料電池・水素技術開発ロードマップ(NEDO)
(4) 本学理工学部では、2021~2024年度に、NEDOの「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業(研究代表者:衣本)」の委託を受け、PEFCの中で酸素が反応する電極の性能を向上させる研究に取り組み、実験室レベルでの技術開発に成功しました。この手法が事業名に入っている“アミジン修飾”です。
(5) 本事業では、アミジン修飾技術を、実験室レベルから燃料電池実機搭載レベルに引き上げるための研究に、パナソニック株式会社と共同で取り組みます。
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【事項2】医学部に新たな寄附講座「きつき未来運動器医療講座」を開設
本寄附講座では、杵築市地域における健康寿命への影響が強い変形性膝関節症と骨粗鬆症の実態を把握し、地域医療の向上を目指すとともに、最新の診療・治療システムを導入することを目的としています。
特に高齢者の多い地域において、オンライン診療システムを構築し、Mobility as a Service(MaaS:マース)を活用することで医療アクセスを改善するとともに、変形性膝関節症に対する新しい治療法としての末梢神経ラジオ波焼灼療法(Peripheral Nerve Radiofrequency Ablation:PRFA)や、骨粗鬆症に対する最新の薬物療法を臨床研究の対象とします。
本寄附講座は、地域の高齢者がより質の高い運動器の医療を受けられる環境を整備することを目標としています。
(1) 杵築市地域における変形性膝関節症と骨粗鬆症の実態把握
地域住民の運動器に関わる健康状態をより正確に把握し、効果的な治療介入へと繋げるため、杵築市の住民を対象に、疫学的データを収集します。
(2) オンライン診療システムの構築とMaaSの活用
MaaSの概念を導入し、病院から遠い所に住む移動困難な高齢者でも、外来診療で可能な医療行為も受けることができるようになります。
(3) 変形性膝関節症に対するPRFAの臨床研究
多角的な評価を実施し、治療効果のエビデンスを構築します。
(4) 骨粗鬆症に対する薬物療法の最適化研究
多くの既往症を有する高齢者に対して、より安全で効果的な骨粗鬆症治療プロトコルの確立・普及を目指します。
本寄附講座では、高齢者のQOL(生活の質)を低下させる主要な疾患の変形性膝関節症・骨粗鬆症に対する治療だけでなく、地域医療のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し
1.オンライン診療とMaaSの組み合わせによる「移動型医療」モデルの確立
2.新規治療法(PRFA)のエビデンス確立と標準治療化の推進
3.高齢者のQOL向上と地域医療の持属可能性の向上をテーマとして掲げ、新たな医療モデルを研究します。
そのような取り組みの中で、杵築市立山香病院を地域医療の実習拠点とし、寄附講座を窓口とした人材(整形外科医)育成にも努めて参ります。
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【事項3】大分大学発研究シーズの社会実装を加速!
~大分大学発スタートアップ設立のためのGAP資金を獲得~
本学を含む全20機関が参加する九州・沖縄圏の大学発スタートアップの創出を支援するPARKS(パークス:Platform for All Regions of Kyushu & Okinawa for Startup-ecosystem)のGAP資金※ であるSTEP1(GAP資金650万円)の採択結果が発表され、本学からは2件が採択されました。
大分大学発スタートアップは現在10社あります。本学は、今後も研究開発成果の社会実装を目指し、大学発スタートアップの継続的な設立を続けていきます。
※GAP資金:ギャップ資金。大学の基礎研究と事業化の間に潜む「資金の空白(ギャップ)」を埋めるために、政府が大学や研究者に提供する資金のこと。
【GAP資金を獲得した本学の研究シーズ】
(1) 医学部臨床薬理学講座TCB研究室 松岡茂 特任教授
「希少疾患治療を目指す抗線維化吸入製剤の開発」
医学部松岡茂特任教授が担当している研究シーズで見出された新規低分子化合物は、治療法のない難病・特発性肺線維症(IPF)に対し、マウスモデル実験で既存薬を超える治療効果と高い安全性を示しました。この新薬候補のポテンシャルをさらに高めるため、肺に直接届ける吸入型ナノ製剤として開発を進める大学発スタートアップの設立を目指しています。
AMED橋渡し事業で製剤化された試作品を用いて、獲得した資金を元に粒径・分散安定性・放出性などの物理化学的特性、ならびにin vivoでの有効性・安全性評価により製剤PoC※ ※の確立を目指します。
※PoC…新しい概念や理論、原理などが実現可能であることのエビデンスのこと
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(2) グローカル感染症研究センター 衛藤剛 教授
「難治性である消化器癌腹膜転移に対する制限増殖型レオウイルス製剤の開発」
医学部衛藤教授が担当している研究シーズを元に、切除が困難で、かつ、再発癌は極めて予後不良な消化器癌腹膜転移(国内患者数4万人/年)を根治するための制限増殖型レオウイルスを用いた新規治療法の実用化を目的とした大学発スタートアップの設立を目指すものです。
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【事項4】大分大学とパーク24株式会社が「ライフサイクルCO²削減」に関する共同研究を開始
本学経済学部の中本裕哉准教授と、カーシェアリングサービス「タイムズカー」を展開するパーク24株式会社は、同社が保有する会員アンケートデータや利用実績データを活用し、カーシェアリングによるライフサイクルCO²※ 排出削減効果など、社会的インパクトを定量的に把握することを目的とした共同研究を開始しました。
地球温暖化対策が国際的な重要課題となる中、日本国内でも2050年カーボンニュートラルの実現に向け、各分野での取組みが加速しています。モビリティ業界においても、次世代の移動手段や交通インフラの整備に加え、循環型経済を志向したビジネスモデルの構築など、多様な施策が進められています。
本共同研究では、カーシェアリングサービスのネットワーク拡大・普及を通して、個人による自動車保有からカーシェアリングへの移行が、どの程度ライフサイクルCO2排出削減に寄与するかを明らかにし、その効果をさらに高めるための運用面での示唆を得ることを目的とします。
※ライフサイクルCO²:製品の原材料調達から製造、輸送、使用、廃棄・リサイクルに至る全段階で排出されるCO²の総量
パーク24株式会社は、2009年よりカーシェアリングサービス「タイムズカー」を展開し、現在(2025年5月末時点)では全国に58,772台の車両を配備し、会員数は332万人を超えています。
本共同研究では、同社が保有する膨大な利用実績データと会員属性データをもとに、より精度の高い、信頼性のある分析が可能となります。また、カーシェアリングの普及により生じる人々の移動手段の変化(行動変容)が、これまでどの程度のライフサイクルCO²排出削減に貢献してきたのか、そして今後どのような貢献が見込まれるかを、学術的な観点から明らかにしていきます。
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【事項5】先進医療科学科における国際医療技術人材育成と医療機器の海外展開を支援する
シンポジウムの開催
本学では、2010年に大分県、宮崎県で発足した東九州メディカルバレー構想事業の一環として、ASEANの医療技術人材育成を医学部附属臨床医工学センターが中心となって行ってきました。
先進医療科学科は、令和5年度に医学部に新設し、国立大学で初めて臨床工学技士を養成する学科です。
先進医療科学科では、令和7年5月にタイ国立タマサート大学国際医学部の体外循環技師の学生を受け入れました。タイ王国の体外循環技師の業務は、日本の臨床工学技士と類似しています。研修生の受け入れは、今回が初めてとなりました。
さらに、日本医療研究開発機構(AMED)、東九州メディカルバレー構想事業として、医療機器の海外展開を支援するための初めての国際シンポジウム「国際展開シンポジウムinおおいた」を大分市で開催します。
令和7年5月11日~17日にタイ国立タマサート大学国際医学部のCardiovascular and Thoracic Technology学科の体外循環技師の学生6名を受け入れるとともに大分県産医療機器の海外展開に向けた支援を行ってきました。
タイ王国における体外循環技師は、主に手術室での人工心肺装置の操作、ECMOの管理、カテーテル手術など日本の臨床工学技士の業務に非常に近い職種になります。また、医学部附属臨床医工学センターと連携し、先進医療科学科に設置した臨床医工学実習室で大分県産の医療機器を紹介し、タイ王国やASEANでのニーズ探索を行いました。
これら国際医療技術人材育成事業を通じ、令和7年10月18日に、国産医療機器をASEANに普及させることを目的とする「国際展開シンポジウムinおおいた」を大分市で開催します。
本シンポジウムでは、本学がこれまで東九州メディカルバレー構想で構築したネットワークを通じ、タイ国立大学教授、企業CEOを招聘し、東九州メディカルバレー構想における国際医療技術人材育成を通じた国産医療機器の海外展開に向けた話題を提供します。
本学医学部先進医療科学科、医学部附属臨床医工学センター、医学部附属病院ME機器センターなど全学的に連携することで、医療機器のニーズ探索から海外展開支援までワンストップでサポートする体制(東九州モデル・エコシステム拠点)を構築し、東九州メディカルバレー構想を次のステージに進めるためのシンポジウムです。
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その他の情報
【事項1】第37回グローカル感染症研究セミナー
テーマ:ヒトに感染するピロリ菌以外のHelicobacter属細菌
-ピロリ菌だけじゃないんです︕-(演者:林原絵美子先生)
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【事項2】令和7年度大分大学理工学部公開講座「未来をつくる電子工学」
電気の力を活用し、新しい技術を生み出すことで、社会は進化してきました。そのしくみを知れば、あなたも新たな魔法を創れるかもしれません。
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【事項3】 中高生の理系進路選択支援・次世代人材育成「知的・サイエンスナビ」
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【事項4】令和7年度大分大学公開講座「夏休み子どもチャレンジ! 将棋講座」
例年人気の公開講座!将棋初心者から将棋をもっと強くなりたい人まで。講座では棋力の認定を行い、日本将棋連盟の認定証を交付します。
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【事項5】BUNDAI GXセミナー2025上期
GX(グリーントランスフォーメーション)に関連する研究や取組について、わかりやすく解説します。
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【事項6】令和7年度大分大学公開講座「英語なぜなぜ問答」
英語や英語圏のことについて「知らなかったことを知る喜び」や「知りたかったことを知る喜び」を味わってみませんか?
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【事項7】高校生なるほどアイデアコンテスト2025
イノベーティブな新製品やサービス、地域づくりに関するアイデアを募集!
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