お知らせ令和7年度11月学長記者会見
令和7年度11月学長記者会見
- 日時
- 2025-1125
- 場所
- 県庁記者会見室
▲説明をする北野学長
【事項1】JSPS学術国際交流事業『国際的な共同研究等の促進』
大分大学主催『アフリカにおけるピロリ菌・マイクロバイオータ研究拠点』
~ナイロビで8か国合同キックオフ会議を開催~
大分大学グローカル感染症研究センター(代表:山岡𠮷生教授)は、JSPS学術国際交流事業『国際的な共同研究等の促進:研究拠点形成事業』に採択された『アフリカにおけるピロリ菌およびマイクロバイオータ研究拠点形成』プロジェクトの一環として、10月18日にケニア・ナイロビでキックオフ会議を開催しました。
本プロジェクトは、胃がんの主因である Helicobacter pylori(ピロリ菌)や胃腸内マイクロバイオータの解析を通じて、アフリカ地域における感染症・消化器疾患の実態解明、研究基盤整備、若手研究者育成を目指す国際共同研究事業です。
アフリカでは依然としてHIV・結核・マラリアなどの感染症の負担が大きい一方、経済発展と寿命延長により、がんをはじめとする慢性疾患への医療ニーズが急速に高まっています。
特にピロリ菌感染率は80%以上と推定される国が多いにもかかわらず、胃がんは比較的少ないという「アフリカン・エニグマ(アフリカの謎)」と呼ばれる現象が存在し、その実態は未解明です。
また、コンゴ民主共和国やケニアでは、除菌治療に使用する複数の抗菌薬に対する高い耐性が既に報告されており、地域ごとの監視体制構築が急務となっています。さらに、コンゴ民主共和国のマイクロバイオータ研究では、他地域では見られない独自の胃内細菌叢が確認されるなど、広域的かつ包括的な調査の必要性が高まっています。
しかし、アフリカ諸国ではピロリ菌の分離培養やゲノム解析に必要な研究インフラが十分でなく、抗菌薬耐性監視や病原性評価が困難な状況です。
本学は、2017~2019年度に実施した「アジア・アフリカ学術基盤形成事業」を通じ、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、ケニア、南アフリカで研究体制強化を進め、抗菌薬耐性プロファイルや病原性因子の解析に取り組んできました。その後、これらのネットワークは「African Helicobacter and Microbiota Study Group(AHMSG)」として発展し、2024年8月には南アフリカで設立総会が開催されました。
今回のキックオフ会議には、ケニア、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、タンザニア、ルワンダ、ザンビア、南アフリカ、日本の8か国から研究者が参加し、共同解析計画、シーケンス技術の導入、若手育成プログラムなどについて活発な議論が行われました。山岡教授は本事業の総括責任者として、アジア地域で長年主導してきたピロリ菌国際研究ネットワークの実績を基盤に、アフリカにおける持続的な研究拠点形成と、日本・アジア・アフリカを結ぶ国際的感染症研究ネットワークの構築を目指しています。
本プロジェクトでは、まず現地研究者との研究ネットワーク形成と研究能力強化を目的として、ナイロビにおいてキックオフ会議を開催しました。現地では、各国の代表者による研究計画の発表、倫理審査・試料取扱いに関する共通基準の確認、ならびに将来の人材交流計画の策定を行いました。
さらに、事業開始後の最初の研究者交流として、11月19日から2週間、ナイジェリアより若手研究者1名を本学に受け入れ、ゲノム解析・抗菌薬耐性評価・サンプル処理技術に関する集中研修を実施しています。本研修では、本学の研究設備を活用した実践的なトレーニングを行い、帰国後に各国の研究拠点で中核となる若手人材の育成を進めています。
今後は、各国での胃生検サンプル収集・保存体制の確立、および本学での次世代シーケンス解析・抗菌薬耐性遺伝子の解析支援を実施します。また、若手研究者育成プログラムをさらに展開し、持続的な国際共同研究体制を整備します。
なお、本事業はアフリカHelicobacter and Microbiota Study Group(AHMSG)と連携し、アジア地域での研究ネットワーク(ASEAN Stomach and Microbiota Group)との橋渡しを進めています。
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【事項2】生活習慣病予防・治療における入浴療法の新展開
~大分大学と株式会社ホットアルバム炭酸泉タブレットの共同研究~
本学と株式会社ホットアルバム炭酸泉タブレットは、「中性重炭酸イオン入浴剤を用いた全身浴が生活習慣病にもたらす効果」について9月10日に共同研究契約を締結しました。
現代社会では、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病が増加しており、その背景には慢性炎症や代謝異常、免疫機能の低下が複雑に関与しています。薬物療法のみではコントロールの限界や、副作用リスクもあり、根本的な体質を改善するためのからだへの負担やリスクの少ないかつ日常生活に取り入れやすい新規療法が求められます。
本研究では、肥満モデルを用いて重炭酸イオン入浴による温熱効果が生体応答に及ぼす影響を明らかにし、糖尿病や脂質異常といった生活習慣病に対する有効性を検証します。
これまでの研究では、重炭酸イオン入浴により以下のような効果が報告されています。
▶ 抗炎症(HSP70発現誘導)
▶ 代謝制御(インスリン感受性向上)
▶ 腸内環境改善(善玉菌の増加)
▶ 精神的ストレス緩和(睡眠の質向上)
▶ 免疫機能の恒常性維持
本研究を通じて、重炭酸イオン入浴剤による全身浴が生活習慣病に与える生理学的効果を科学的に解明し、薬物治療を補完するからだへの負担やリスクの少ない新たな療法の開発を目指します。
株式会社ホットアルバム炭酸泉タブレットが開発した中性重炭酸イオン入浴剤は、大分県竹田市直入町の長湯温泉の自然炭酸泉の泉質が再現されたものです。肥満・代謝に関する治療・研究を積み重ねてきた本学との連携により、重炭酸イオン入浴の生活習慣病に対する効果を学術的に検証することが可能になります。本研究は大分県竹田市の支援も得て、研究成果が発信されることで重炭酸イオン入浴の健康増進への応用にとどまらず、大分県におけるヘルスツーリズム推進に寄与することも期待されます。
肥満を誘発した動物モデルを対象に、通常湯と重炭酸イオン湯での入浴効果を比較し、糖尿病や脂質異常に関する検査項目を測定、解析します。
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【事項3】令和7年度市民向けシンポジウム
「自然災害時における健康危機をどう防ぐ?助かる いのちを助けるための自助・共助・公助」の開催
近年頻発している自然災害に備え、災害に強いまちづくりに寄与することを目指して、公開シンポジウムを開催します。
本シンポジウムでは、特に被災者の健康管理や避難所の在り方に焦点をあて、本学の取組を紹介する講演や専門家によるパネルディスカッションを実施し、災害時の自助・共助・公助の在り方について考え、大分地域における防災・減災意識の向上を目指します。
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その他の情報
【事項1】大分大学クライシスマネジメント機構 公開講座「感染症危機管理と感染症疫学」
我々は常に感染症のリスクに常にさらされています。病原体や感染症に関する基礎知識、予防・治療から、サーベイランスで流行の兆しを早期に捉え、流行時に適切な対策を講じるまでをカバーする感染症危機管理の実務に当たる方向けの実践講座です。(全8回)
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【事項2】BUNDAI GXセミナー2025(下期)
GX(グリーントランスフォーメーション)に関連する研究や取組について、わかりやすく解説します。
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【事項3】大分大学医学部公開講座 避難所生活の「ちょっと体験」-眠りを通して考える備え-
今年度は避難所での「睡眠」に注目し、模擬避難所での睡眠行動の体験を通して、避難所における避難所での睡眠の質を高めるための工夫を具体的に考えます。平時からの備えの重要性を理解し、何か一つでも「自分にもできる」と思える行動を身につけることを目指します。災害への備えについて一緒に考えましょう!
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【事項4】大分大学公開講座「声を澄ませて、お話を読むⅠ ~体ほぐし・音読~」
この講座では場と共鳴する声を目指します。20分間の体ほぐし、20分の発音・発声練習、35分の音読・朗読練習に取り組みます。
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【事項5】第17回国際文化祭を開催 ~多彩な日本文化体験プログラムによる地域住民と留学生の 交流~
大分大学国際交流会館が立地する錦町1丁目自治会と本学学生からなる国際交流ボランティア会(グローバルクルー)の協力のもと、地域住民と本学外国人留学生との交流を目的として、第17回国際文化祭を開催します。
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【事項6】大分大学医学部附属病院「ふれあいコンサート」
年2回開催しており、患者さんから毎回嬉しい言葉をいただいています。
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【事項7】大分大学STEAMLab(スティームラボ)クリエイティブ講座vol.6!
子どもから大人まで参加できる、ものづくりの講座を開催します!5つの講座から、好きなものを選べます。
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