お知らせ令和7年度4月学長記者会見
令和7年度4月学長記者会見
- 日時
- 2025-0418
- 場所
- 県庁記者会見室

▲説明をする北野学長
【事項1】医学部に新たな寄附講座「消化器がん先端診療学講座」を開設
難治性の消化器がん、特に膵がんや胆道がんの予後は極めて不良で、早期発見や診断率が低いことが課題とされています。一方で、内視鏡を含む消化器がんの診断や治療は、医療機器の進歩やAIの登場により、目覚ましく発展しています。現在、大分大学医学部附属病院の消化器内科および消化器外科は、消化器がんの診断と治療において高い専門性と診療実績を有しています。今後、胆・膵がんを含む難治性の消化器がんの治療成績向上は必須の課題であり、これに特化した教育や研究が必要です。
2025年4月1日付で開設された本講座は社会医療法人三愛会 大分三愛メディカルセンター(三島康典理事長)による寄附講座であり、難治性の消化器がんの早期発見率や診断率の向上を目的とし、特に胆・膵領域における診断技術の開発・改良を進めるために開設された講座です。この講座には、専任教員として講師1名(佐上亮太講師)、助教1名(河村昌寛助教)が配置され、消化器がんに関するAI内視鏡や超音波内視鏡などの高度な医療の推進や最新の研究成果の診療現場への反映が期待されます。さらには診断精度の向上と治療成績の改善により地域医療への貢献を果たすとともに、次世代の医療従事者の育成も行います。
【活動内容】
- 診療:専任教員確保による医療の質向上や早期発見・診断率向上による予後改善。高度な教育を受けた医師による地域医療の質の向上
- 教育:消化器内科・外科の専修医/研修医、医学生(主に医学部医学科4年生~6年生の臨床実習)を対象とした高度な診療教育による医療人育成
- 研究:消化器がんの新規バイオマーカーやAI画像診断技術などの次世代診断技術の開発や臨床試験の実施を行う
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【事項2】科学技術振興機構(JST)大学発スタートアップ・エコシステム採択
「AIによる手術動画を言語化する技術および手術記録自動作成ツールの開発」
科学技術振興機構(JST)による「大学・エコシステム推進型スタートアップ・エコシステム形成支援」により設立されたPlatform for All Regions of Kyushu & Okinawa for Startup-ecosystem(PARKS: パークス)は、2024年度スタートアップ・エコシステム共創プログラムを公募し、本学医学部が申請した「AIを活用した手術動画の言語化技術および医療記録機器の開発」が採択されました。
本事業は、これまでに本学医学部で行ってきた安全な手術のためのAI支援ソフトウェア開発の技術を応用し、手術動画をAIがリアルタイムで自動的に言語化する技術および機器を開発するものです。
この開発で可能となることは、手術に関する書類の自動作成、手術室のコミュニケーションツールとしての利用、教育や研究へ利用することであり、これは医師の労働時間の短縮や正確な医療情報の収集へとつながります。
令和6年10月1日からスタートし、製品開発・事業化へ向けたスタートアップの取り組みを進めていきます。
医療分野全体におけるAIは、診療情報や画像・病理診断に関する開発は進んでいますが、手術を含めた医療動画のAI開発は遅れているのが現状です。
本学医学部では、これまでにAI手術支援ソフトウェアを開発してきた実績があります。この開発のノウハウを利用し、今回は手術動画を言語化する新たな技術開発を進め、手術記録自動作成ツールの製品化をめざしています。現在までに本技術の特許申請を完了し、胆嚢摘出術における製品化と市場調査を実施しています。
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【事項3】日本医療研究開発機構(AMED)令和7年度「革新的がん医療実用化研究事業」採択
~希少がんの世界的な標準治療、世界各国のガイドラインの収載を目指して~
令和7~9年度AMED革新的がん医療実用化研究事業に「限局性高悪性度軟部肉腫の標準的治療法確立のための臨床研究」(主任研究者:田仲和宏)が採択されました。
この臨床研究は、軟部肉腫に対する新たなランダム化比較試験を実施するものです。
我が国のがんに対する治療開発では、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が主要な役割を果たしています。大分大学医学部整形外科講座は、整形外科領域の悪性腫瘍(肉腫)を専門とするJCOG骨軟部腫瘍グループ(グループ事務局長:田仲和宏)の中核施設として、肉腫に対する標準治療確立のための臨床試験を主導しています。
これまでも、JCOG骨軟部腫瘍グループで「限局性軟部肉腫に対するランダム化比較試験JCOG1306(研究事務局:田仲和宏)」や、「進行軟部肉腫に対するランダム化試験JCOG1802(研究代表者:田仲和宏)」等の検証的な臨床試験を実施し、我が国における肉腫に対する治療開発を牽引してきました。
また、これらの臨床試験を実施するための研究費の助成を日本医療研究開発機構(AMED)から受けてきました(令和元年~3年度および令和4~6年度AMED革新的がん医療実用化研究事業 [主任研究者:田仲和宏])。
軟部肉腫とは、筋肉や脂肪組織、血管組織、線維組織など全身の軟部組織から発生する悪性腫瘍のことです。国内の軟部肉腫の新規発生数は年間約2000人であり、人口10万人当たり約1.5人の希少がんです。
遠隔転移の無い限局性の軟部肉腫のうち、高悪性度で深部発生かつサイズ5cm超のものは、手術のみでは高率に転移を生じる予後不良の高リスク例であり、手術による切除に加えて抗がん剤による補助化学療法が必要です。
我が国の高リスク軟部肉腫に対する補助化学療法の標準治療は、我々が実施したJCOG1306試験で確立した、アドリアマイシンとイホスファミドを併用するAI療法による術前化学療法(NeoAdjuvant Chemotherapy: NAC(以下「NAC」))3コース、術後化学療法(Adjuvant Chemotherapy: AC(以下「AC」))2コースを行う治療法です(2020年および2024年米国臨床腫瘍学会ASCOにて口頭発表:田仲和宏)。
JCOG1306試験の結果、AI療法による高リスク軟部肉腫の3年生存率は91.4%と極めて良好な成績でした(Tanaka K, et al. British Journal of Cancer,2022.[Impact factor 2022 = 9.075])。
しかし、JCOG1306試験においては、NACの効果により腫瘍が縮小する割合が約9%程度なのに対し、NAC中に腫瘍が増大し予期せぬ切断や切除範囲の拡大を余儀なくされる例が約10%もあった事が大きな課題となりました。
もし手術を先行し、腫瘍切除後に化学療法を行う治療法であれば、このような予期せぬ切断のリスクは全くありません。
しかし、現在標準のNACによる治療法と手術先行の治療法との比較が、世界的にも全く行われていないため、どちらの治療法が優れているかは不明であり、軟部肉腫の患者が最適な治療を受けられていない可能性があります。
そこで今回AMEDから研究費の助成を受け、高リスク軟部肉腫を対象に、化学療法を先行する治療と手術を先行する治療とを直接比較する世界初のランダム化比較試験であるJCOG2102試験を実施します。
本試験は、現在の標準治療であるAI療法による「NAC3コース+手術+AC2コース」に対する、試験治療であるAI療法による「手術+AC3コース」が全生存期間(登録後患者さんが生存している期間)において劣らないこと(非劣性)を検証するランダム化比較試験です。
本試験の結果、手術を先行する試験治療の非劣性が示されれば、NAC中に腫瘍が増大し予期せぬ切断を強いられるリスクが全く無いため、世界的にも「手術+AC3コース」が新たな標準治療となると考えています。また、この臨床試験の結果が我が国をはじめ世界各国のガイドラインにも収載されると期待されます。
16歳~70歳の四肢・体幹部発生の切除可能な高リスク軟部肉腫の患者に、標準治療群または試験治療群にランダムに振り分けて治療を行います。
標準治療群では、AI療法としてアドリアマイシン30 mg/m2/day(day 1、2)+イホスファミド2 g/m2/day(day 1-5)を投与します。
3週1コースとして術前3週×3コース、手術の後に3週×2コース行います。
一方、試験治療群では、まず手術を行い術後に同様のAI療法を3週×3コース行います。
主たる評価項目は、全生存期間、副次的評価項目は無増悪生存期間(登録後病気の悪化が無く患者さんが生存している期間)、有害事象発生割合としました。予定登録数は224例であり、現在JCOG骨軟部腫瘍グループの全39施設で登録中です。
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【事項4】大分大学「地域経済社会教育開発センター」を新設
「地方創生」が進められる一方、地方圏のコミュニティでは人口減少と経済社会変化により弱体化は続いています。こうした地域で起きる様々な社会問題を主体的に解決する人材や集団・組織の育成が期待されています。
本学では、こうした「地域づくり」の核となる人材育成の教育研究開発拠点として、文部科学省から認可を受けて「地域経済社会教育開発センター」を新設しました。
大分県の人口減少は加速化し、県内でも地域間格差の拡大が起き、よりきめ細かい地域づくりが求められています。また、全国的にみて大分県は就労場所である民営事業所が少なく、県民所得も低い傾向にあります。一方で、自然・食・観光・歴史・文化・技術等の地域ブランドに発展する地域資源は豊富にあります。県内に高等教育機関は少なく、本学が「地域づくり」を軸に教育研究や人材育成(プロビジョン問題)へ対応することは喫緊の課題、社会的ミッションとも言えます。
本センターでは、現在、弱体化・縮小化しているコミュニティの価値を適正に評価し、教育研究を通じて地域の価値を大きく育てるインキュベートセンターとして機能を果たします。
本センターの特色は、医療・福祉・産業の課題に対し、社会科学的アプローチを加え、多角的に地域課題を解決できる教育実践を行います。
センターには、地域研究・教育開発/地域連携/社会実装/認証の4部門を置き、一連の流れで取り組みます。
本学がもつ総合大学としての分野横断的な知的インフラを活用し、地域社会を構成する市民と学生がともに地域課題の解決に関心を持てるように、住民・学生・研究者それぞれの視点を活かした総合的な「地域づくり」を提案・実践・実装するセンターです。
また、全学の部局・機構・センターの教育研究者が連携できる研究交流のハブ的役割も担い、2040年に本学が目指す地域共創・共生拠点に向けた取組みの1つとして、地域と大学の新たな共創関係を目指す先進的な取組みを展開していきます。
地域と関わり、地域課題を発見・分析・協働実践する学部教育を開発実践していきます。今年度にキックオフセミナーを実施し、実践展開をします。これまでの実績として、大分県内15地域および被災地・福島県川内村・楢葉町等でのノルディック教室展開、敷戸団地でのコミュニティ創生、佐伯船頭町での地域交流創出等を行い、大学ホームページや広報誌に記事を掲載しています。
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その他の情報
【事項1】令和6年度 卒業式・学位記授与式及び令和7年度 入学式の挙行報告
大分市の iichiko総合文化センター「iichikoグランシアタ」において、令和7年3月25日(火)に令和6年度卒業式・学位記授与式を、令和7年4月2日(水)に令和7年度入学式を挙行しました。
式では、学生サークルによる演奏、国歌および学歌の斉唱や、手話通訳が行われました。また、新たな試みとして、会場の外に学長・学部長の等身大パネルを設置し、多くの学生の撮影スポットとなりました。式の動画は本学ホームページに公開しています。
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【事項2】大分大学で高校生向けのSTEAM動画教材を開発!
探究学習 に新たな視点を!「地方で活躍する若者に迫る! ~三浦里芳さんの挑戦~」
本学の教育マネジメント機構STEAM教育センター(以下、「STEAM教育推進センター」)は、一般社団法人学びのイノベーションプラットフォーム【PLIJ】「創造的・俯瞰的学びを実現するSTEAM教材の開発と高度化」事業の委託を受けてSTEAM教材の制作を行いました。
社会環境の変化の中、自ら行動を起こし、新たな価値を生み出し、挑戦する力とした広義のアントレプレナーシップを背景にして、高等学校等で生徒の探究心や創造性を喚起することを目指したSTEAM動画教材を、本学経済学部を2023年3月に卒業してそのまま起業家への道を選び、別府市を中心に活躍する三浦里芳さんにスポットをあてて制作しました。
このSTEAM動画教材は、高等学校での「総合的な探究の時間」等で活用してもらいたいと考え制作した動画です。
STEAM教育推進センターは、これまで、体験やイベントを主に小中高校生へのSTEAM教育を行ってきましたが、動画での授業活用を目指した教材は、初の試みになります。
STEAM教育推進センターは、2023年度からスタートし、2024年度は2年目で、以下の1~3のプロジェクトを展開しました。
- 大学生へのSTEAM教育の充実
教養教育におけるSTEAM教育の充実
(例:デザイン思考とSTEAMなど) - 小中高校生へのSTEAM教育の実践・普及、理工学部、教育
学部と連携したSTEAM教育の実施
(例:大分大学STEAM夏祭り2024等のイベント) - 女子中高生への理系進路選択支援
理工学部、大分大学ダイバーシティ推進本部と連携した事業を展開
(例:大学体験バスツアーやメタバース空間を活用した地方創生ビジネスへの挑戦など)
▶ 探究学習に新たな視点を!「地方で活躍する若者に迫る!~三浦里芳さんの挑戦~」
【事項3】被災地における理科支援事業「出前おもしろ実験室」プロジェクトに参画します
能登半島地震及び奥能登豪雨で被災した地域において、教育機会が減少してしまった子どもたちに理科の学びの機会と心から楽しめる時間を提供し、科学の楽しさを伝えることで科学について少しでも興味関心を持ってもらうこと、さらには学びへの意欲を失わせないことを目的として、令和7年度に被災地域の子どもたちを対象とした理科支援プロジェクトを実施することを予定しています。実施時期は令和7年5月1日~令和8年3月31日のうち、1週間程度を予定しています。
このプロジェクトでは鳥取大学技術部が中心となり、大分大学理工学部技術部、さらに金沢大学、名古屋工業大学、東北大学、神戸大学の各技術組織との共催で、各技術組織から集まったスタッフにより、石川県鳳珠郡能登町の小・中学校で体験型科学実験教室「出前おもしろ実験室」を開催する予定です。
現在、本プロジェクトの実施に必要な資金を集めるため、6大学合同プロジェクトとして以下のとおりクラウドファンディングを実施しております。目標金額は達成しましたが、目標金額を越えたご支援については、開催地の拡大や実験内容の増加、スタッフの増員など本プロジェクトの目的に沿って活用させていただきます。引き続き、皆様の温かいご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
- クラウドファンディング期間:2025年3月3日(月)9:00 ~ 4月30日(水)23:00まで
- 目標金額:50万円
- ご支援の使途:
実施機材輸送費
現地移動費
実験消耗品費
その他、被災地における理科支援事業の趣旨に沿った活用
【事項4】2025 Spring STEAM特別講座 3days
小学5年生~中学3年生を対象とした「2025 Spring STEAM特別講座」を開催します。
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【事項5】GX特別講演会
「地球温暖化問題と、その解決手段であるCCUSを考える!~大分コンビナートでの事例を交え~」
地球温暖化問題と、その解決手段であるCCUSを考える!
~大分コンビナートでの事例を交え~
(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)大城昌晃氏)
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【事項6】大分大学大学院福祉健康科学研究科 臨床心理教育研究センター
心理教育相談室開室20周年記念講演会
福祉健康科学研究科心理教育相談室は、平成16年度に開設し、地域住民に対する心理支援の拠点として、また公認心理師・臨床心理士の養成や、臨床心理学の研究を担う機関として活動してきまし た。このたび、開室20周年を迎え、記念講演会を開催します。ぜひご参加下さい。
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